ニューヨーク市にあるコロンビア大では、イスラエルによる暴力が続くパレスチナに連帯を示す学生らがキャンパス内で抗議活動を繰り広げ、先週には警察が介入して学生ら100人超を逮捕するなど緊迫した状況が続いている。
こうしたなか、大学OBでユダヤ系の大富豪であるクラフトは22日の声明で、大学側が「学生や教職員を守ると確信できなくなった」と述べ、「是正措置が取られるまで」支援を控える考えを示した。
「2024年の米国のニューヨーク市で、それもコロンビア大学で、ユダヤ人の学生がクラスに出席するのを怖がるなどという事態はとても信じられない」。クラフトは同日、CNNのインタビューでそう語っている。
クラフトは、抗議に参加している学生や教職員は説明責任が欠けていると批判し、自身の行動が招く結果を避けるためにマスクなどで顔を覆い隠しているとも主張した。コロンビア大を含む大学側に対しては、学生がキャンパス内で安全と感じられるようにもっと力を尽くすべきだと訴えた。
ただ、コロンビア大の施設で自身の名前を冠した「ユダヤ人の学生生活のためのクラフトセンター」については、ユダヤ人学生の「安全な避難所」になっているとして、引き続き支援する意向を示している。
「思想吹き込んでいる」と教員もやり玉に
クラフトはFOXニュースのインタビューでは、大学のキャンパスでヘイトスピーチ(憎悪表現)、とくにユダヤ人に対するヘイトスピーチを目にするのは「苦痛だ」と話した。また「学生たちに考え方を教えるのでなく、どう考えるべきかを吹き込もうとしている」教員がいるとも批判した。コロンビア大の広報担当者、サマンサ・スレーターはフォーブスの取材に「クラフト氏による長年の惜しみないご支援とご尽力に感謝している」と述べるとともに、コロンビア大コミュニティーのメンバーにとって今は「危機的な時期」だとの認識を示した。
クラフトはフォーブスの推定で純資産111億ドル(約1兆7200億円)と世界180位の富豪。コロンビア大への大口寄付者で、2000年にはクラフトセンター設立のために300万ドル(現在の為替レートで約4億6500万円)を寄付している。