プランテンガによるショック療法の後、ヴィンテッドのユーザー数と出品数は増加した。しかし、事業はまだ生命維持装置につながれた状態だった。プランテンガは、契約もないまましばらく仕事を続けた後、2017年11月に、疲れ果てた共同創業者たちからCEOの座を引き継いだ。現在、ヴィンテッドの共同創業者たちは全員、会社から身を引いている。
高級アパレルへの進出
パンデミックを追い風にしたeコマースブームをきっかけに、ヴィンテッドは、競合のEtsy(エッツィー)と、欧州最大のeコマース市場であるイギリスをめぐる争いをはじめた。そして、広告費の増額と配送オプションの微調整によってこの市場に食い込んだ。プランテンガは、その後も事業拡大を続け、デンマークとフィンランドにも乗り込んだ。彼は、次にどの国をターゲットにするかを数学的な計算式でプロットしており、それぞれの新たな拠点で、広告を最適化し、配送を合理化することで、すべてのユーザーをアクティブにしようとしている。
しかし、今のところ、彼の方程式に当てはまらない市場のひとつが米国だ。イーベイやポッシュマーク、そしてスニーカーマニア向けのGOAT(ゴート)やバーキンの愛好家向けのRebag(リバッグ)のような特化型マーケットプレイスによってこの市場は細分化されている。
それでもプランテンガは挑戦を止めず、一度は米国に乗り込んだが失敗に終わった。 そして、米国市場への野望を一旦保留にした彼は、ヴィンテッドよりも上流の顧客層を狙い、高級アパレルの転売市場の一角を手に入れようと躍起になっている。彼は最近、3000万ドル(約47億円)を投じてドイツの競合のRebelle(リベル)を買収した。高級ファッションに強みを持つリベルは、偽造品と戦うための独自の真贋判定チームを持っている。
「ヴィンテッドは普通の人たちに向けた普通の服のマーケットプレイスですが、私たちは高級品セグメントでも急速に事業を成長させることが可能です。1000ユーロ(約16万円)以上のファッションアイテムは、現在最も急成長しているセグメントなのです」とプランテンガは主張する。
しかし、そう話す彼自身のファッションは、高級品を扱う会社のCEOにはとても見えない。フォーブスがリトアニアの首都ビリニュスにあるヴィンテッドの本社を訪れたときに彼は、古着の穴のあいたTシャツで社内を案内してくれた。彼らのオフィスにないもの、それは洋服の棚だ。
「私たちはハイテク企業であって、アパレル企業ではありません」と彼は肩をすくめて言った。
(forbes.com 原文)