その後、ヴィンテッドは2019年、11億ドル(約1725億円)の評価額で1億4000万ドル(約219億円)を調達し、バルト三国初のユニコーンとなった。
ヨーロッパ特有の事情
ヴィンテッドの手数料の上限は8%で、米国のPoshmark(ポッシュマーク)などの競合の20%と比べれば大幅に安い。「出品アイテムは、3回のクリックでアップロードでき、出品者には手数料がかからない。彼らは売り手の視点から市場を捉えています」と調査会社グローバルデータのルイーズ・デグリーズ・ファーブルは言う。ヴィンテッドはまた、派手な広告キャンペーンと巧みな登録プロセスによって常に豊富な在庫をそろえ、ユーザーを買い物に引き込んでいる。
もうひとつの重要なポイントは、ほとんどの家に玄関ポーチがないヨーロッパの都市部に特有の需要に応えた配送サービスだ。ヴィンテッドは、自宅への配送よりも家の最寄りの雑貨店などへのデリバリーをより安く提供している。欧州の街のあちこちの雑貨店には、ヴィンテッドのラベルが貼られた古着がつまったゴミ袋が溢れている(ヨーロッパの環境意識の高い若い顧客は、梱包の見栄えを気にしない)。
ヴィンテッドの長期的な野望の先には、オンラインマーケットプレイスの大御所、eBay(イーベイ)がある。同社は昨年、110億ドル(約1兆7256億円)相当の衣類を販売したとグローバルデータは推定している。一方、現状のヴィンテッドの年間売上である6億ドル(約941億円)は、昨年11億ドル(約1725億円)の売上を記録した日本のメルカリの半分以下だ。
IPOを目指す連続起業家
しかし、プランテンガはヴィンテッドの新規株式公開(IPO)を視野に入れている。2010年に彼にとって初の起業となるボートのレンタルマーケットプレイスを立ち上げた連続起業家の彼にとって、IPOは長年の夢なのだ。彼がオランダのアイントホーフェン工科大学の同級生と始めたこのビジネスは、大成功こそしなかったものの、後にクラシファイド広告を手掛けるOLXの目に留まり、プランテンガはOLXの新興市場の責任者として、アルゼンチンやケニア、ドバイでの事業を成長させ、今や16億ドル(約2510億円)の売上を誇るクラシファイドサイトの巨人に育て上げた。
プランテンガはその後、OLXの共同創業者でヴィンテッドの投資家でもあるファブリス・グリンダと共に、Sell Itという名の別のクラシファイドサイトを立ち上げて、2015年にスペインの競合に売却した。そして、その頃までに若手起業家としての評価を得ていた彼はある日、インサイト・パートナーズの投資家であるエロディ・デュピュイから、彼の投資先のヴィンテッドの立て直しの依頼の電話を受けたのだった。