巨大ミュージックフェス「コーチェラ」が成功した3つの理由

LE SSERAFIMをはじめアジア勢アーティストも多く出演したコーチェラ2024(Christina House / Los Angeles Times via Getty Images)

LE SSERAFIMをはじめアジア勢アーティストも多く出演したコーチェラ2024(Christina House / Los Angeles Times via Getty Images)

4月12~14,19~21日にかけて、100組におよぶアーテイストが連日昼夜を通して演奏を披露する巨大フェス「コーチェラ」が開催された。カリフォルニア州西部の砂漠地帯に44万平方メートルの広大なフェスティバル会場が設置され、入場者は延べ75万人、日本からもユニバーサルやエイベックスの社長を始め、音楽産業関係者やアーティストが多く参加した。コーチェラをはじめ、スタジアムで行う公演の何倍もの観客を集めることができる、大型のフェスが世界各地で急成長している。

米国内だけでも、テキサス州オースチンで開催される「オースチン・シティ・リミッツ」、ラスベガスの「エレクトリック・デイジー・カーニバル」、「ニューオリンズ・ジャズ・フェスティバル」はいずれも45万人を集客している。データプラットフォームStatista社などによると、2023年のフェス事業の総売り上げは300億ドル(日本円で約4兆6千億円)を上回り、30年までに850億ドル(約13兆1千億円)産業に膨大するとみる声もある。

フェス事業が成功する3つの鍵

フェス成功の鍵は、(1)アーティスト編成の話題性、(2)屋外会場の環境、(3)ユニークな演出の3つに集約される。しかし、こうした成功を収めるためには、少なくとも2,3年の助走期間が必要で、赤字に耐えながら独自の特性を模索、ブランドを高めて始めて成功するものであることから、数年で消滅するフェスも数多い。

「コーチェラ・フェスティバル」は1999年、カリフォルニア州コーチェラ渓谷の環境をこよなく愛する、ポール・トレットが、モダンアートと音楽の融合によるフェスを企画したことが起源。当初は2日間で2万5千人を集めただけに過ぎなかった。しかしながら、巧みなアーティスト編成と、話題性の高いヘッドライナー(主役を務めるアーティストのこと)を招致することに成功。会場には巨大なモダンアートのオブジェやバルーンを点在させ、夜はライトアップ、花火やドローン・アートなどを駆使して夜空と広大なフェス会場を一体化する演出も話題になった。そのため、車で3〜4時間の距離にあるロサンゼルス周辺の高収入の若者たちから圧倒的な支持を得ていった。週末3日間で一人当たり40~70万円の予算で現地に赴く客層に支持されてきたのである。

また、大手興行会社のAEGが、フェス創業者のトレットから商標と興行権を買収したことで、制作費やアーティスト招へい費へのさらなる投資を可能にし、成長を牽引した。
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文=北谷賢司

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