巨大ミュージックフェス「コーチェラ」が成功した3つの理由

収益源の多様化と高額化

従来のフェスの収益源は、チケット代と会場で販売するグッズや飲食などの売り上げ、そしてスポンサー料だったが、最近ではあらゆるサービスが高額で販売されるようになり、収益に貢献している。例えば、コーチェラの週末3日間通しチケットは一般用が499ドル(約7万7千円)、VIPは1~2千ドル(約15〜30万円)で販売されるが、駐車場から会場へのシャトルバスが140ドル(約2万円)、キャンプグラウンドに用意された宿泊用テント使用料も2人用で数千ドル、4人用は6千ドル(約92万円)以上などとコストが積みあがるシステムになっていて、飲食や物販も意図的に質やマージンが高いものが用意されている。

また、コーチェラのチケットは電子チップ入りのリストバンドで管理しており、チケットの種類によって立ち入り区域のセキュリティーチェックを行う。顧客データを電子管理しているため、期間中はもとより開催後もチケット購入者にスポンサーからのアクティベーション勧誘やEコマースの売り込みを行うことができる。

こうして積みあがる利益は莫大な額におよぶ。ビルボード誌によれば、コーチェラでレディー・ガガとラジオヘッドがヘッドライナーを務めた2017年、利益は1億1700万ドル(約181億580万円)を計上し、6日間興行で初の1億ドル越えを記録した。これだけの規模になれば、ヘッドライナーを務めるアーティストのギャラも高騰化しており、1時間程度の出演で5〜800万ドル(約7億〜12億円)がオファーされることも珍しくない。ヘッドライナーたちはギャラに見合った趣向を凝らしたオリジナル・ショーを自らの誇りを掛けて制作することから、SNSやYouTube配信を介して世界から注目を浴びるのである。

アジア勢アーティストの出演

日本人アーティストの出演も増えており、過去にX-Japanや宇多田ひかるが出演、今年はYOASOBIがメインステージに登場した。初音ミクも20年に続き再登場し、新しい学校のリーダーズもステージのトリとして登場するなど、日本人アーティストの存在感が増してきている。特にアジア勢で圧倒的な優位性を誇るのはK-Popアーティストだ。16年に韓国の3人組男性ヒップホップグループEpic Highが登場して以来、昨年のヘッドライナーであるBLACKPINKまで数多い出演者を誇っている。今年もK-POPのガールズ・グループLE SSERAFIMらが出演し、話題を呼んだ。

日本でもフェス事業は拡大していくのか

日本でもフジロック・フェスやサマー・ソニックなど著名な洋楽アーティストと邦楽アーティストの共演を売りに成功を収めてきた歴史がある。最近ではソニーミュージック傘下のチケット会社イープラスがフジロックに出資したことで、より大きな資本を背景に、キャスティングや会場整備へのさらなる投資が期待される。また、EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)領域では、エイベックスがアメリカ・マイアミのビックフェスULTRAを日本に持ち込み、堅調にファンを獲得している。音楽フェスは成長性が高い興行ビジネスと位置付けることが可能である。

懸念としては、洋楽アーティストの招へいコストの急騰、そして騒音や交通渋滞への懸念から開催できる場所が非常に限定されることだ。ともあれ、国内興行界が、新たな収益構造を企画し、北海道や沖縄なども開催地として検討することで、日本版「コーチェラ」の出現を大いに期待したい。

文=北谷賢司

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