そこでアマゾンは2019年、梱包の無駄を減らすために独自の人工知能(AI)モデルを立ち上げた。その結果、同社のデータによると、5年間で少なくとも年間50万トンの包装の削減に貢献した。これはボーイング737型機7750機分に相当する量だ。
アマゾンのパッケージング・イノベーション・チームでシニア・マネージャーを務めるケイラ・フェントンは、フォーブスに「これは、サステナビリティとビジネスがうまく調和した例です」と語った。同社の研究者たちは、Package Decision Engine(パッケージ決定エンジン)と呼ばれるAIモデルを構築し、最も効率的なパッケージングを行おうとしている。
このモデルは、自然言語処理モデルとオンラインストアの各商品に関するテキストベースのデータを使用する。また、返品や商品レビューからのフィードバックも収集し、破損して到着した商品に関する情報も取り込む。さらに、これらのデータをアマゾンの倉庫でコンピュータビジョンを用いて撮影された写真と組み合わせている。これらの写真は、各アイテムの正確なサイズを割り出し、複数の角度からの画像をキャプチャーして、最適な梱包方法を決定するのに役立っている。
また、このモデルは、時間が経つにつれて特定の品目を識別する力を増していく。例えば、大人用おむつのようなプライベートな品物には、特別な配慮が行われるようになり、強力な磁石を持つ製品は、コンベヤーに引っかからないように十分な保護を受けるようになる。
アマゾンの研究者で応用科学者のプラサンス・メイヤッパンと、同社の顧客エクスペリエンスチームで機械学習を担当する物理学者のマシュー・ベイルズは、2021年の論文で、ビジュアルとテキストの両方のデータを組み合わせることで、このモデルのパフォーマンスが30%も向上したと書いている。
ミシガン州立大学のユイハーク・リー助教授は、企業がeコマースのパッケージングの決定にAIを使うのは異例だと話す。「アマゾンは多くのデータを持っているため、この分野におけるAIの導入の最前線にいる。他の企業はそのような大量のデータを持っていない」
北米と欧州でAIを活用中
フェントンによると、年間売上高が5750億ドル(約89兆円)のアマゾンは現在、北米と欧州全域で、パッケージングにAIモデルを使用しており、インドやオーストラリア、日本での展開にも取り組んでいるという。彼女は、このモデルの国際展開がいつ完了するかについては明言を避けたが、そのためにはAIモデルが新しい言語を学習し、その市場特有の商品を取り入れる必要があると説明した。アマゾンは、このAIモデルによって2015年から2022年の間に200万トン以上の包装を削減することができたと述べた。しかし、同社は毎年何トンの包装材を使用しているかを公表していないため、AIモデルによって包装材の総使用量がどれだけ大幅に削減されたかを知るのは難しい。