市場はこの発表を歓迎していない。ネットフリックスの株価は過去5日間で8.75%下落している(本翻訳記事公開時点)。同社は、新規加入者数の公表を停止する理由を次のように説明していた。
「当社は主要な財務指標として収益と営業利益率、そしてエンゲージメント(滞在時間)を重視しています。収益も利益もほとんどなかった創業当初は、会員数の増加が将来の可能性を示す強力な指標でした。しかし現在では、非常に大きな利益とフリーキャッシュフローを生み出しています」
ネットフリックスはまた、広告などの新たなビジネスも行っている同社にとって、会員数は「成長の一要素」に過ぎないと述べている。また、同社の会員プランには多くの異なる階層があるため、会員数の増加の影響を一律の指標で測ることが困難だとも述べている。
一方、ネットフリックスに批判的な見方をする人々は、成長がほぼ頭打ちになった同社が、停滞していると見られたり、シェアを失っていると見られたくないが故に、加入者数の公表を停止すると考えている。同社のパスワード共有の取り締まりは、多くのタダ乗りの顧客に自前で有料会員になることを強制したため、大きな加入者数の増加をもたらしたが、それは一度しか使えないカードだ。
しかし、現状の数字は、ネットフリックスの失速を示していない。今回の決算発表によると、同社は第1四半期に930万人の加入者を増やし、全世界で2億6960万人という競合を大きく上回る加入者数を抱えている。例えば、ディズニー・プラスの加入者数は約1億5000万人だ。
市場がネットフリックスの主張を受け入れるかどうかは、いずれ分かるだろう。筆者は、同社が置かれた状況を見て、マイクロソフトがXboxのハードウェアの売上を報告するのをやめ、代わりに全体的な売上とXbox liveのサブスクリプション収入に焦点を当てたときのビデオゲーム業界の状況を思い出している。
当時のXboxは任天堂とソニーにハードウェア競争で明らかに負けており、四半期ごとに悪いニュースが増えるような状況だった。ネットフリックスの場合は、現状で明確な市場のリーダーではあるが、数字がいつまでも上がり続ける訳ではないことへの不満を回避するために、より「関連性がある」と判断した他の指標に焦点を当てたいようだ。
(forbes.com 原文)