1990年から新型コロナウイルス流行前の2019年まで、世界の死因は一貫して、虚血性心疾患、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患、下気道感染症が上位を占めていた。この期間中に、すべての死因の死者数が年間で0.9~2.4%減少したことにより、全世界で平均寿命が延びた。
ところが、新型コロナウイルスの世界的な大流行で状況は一変。同ウイルスに関連する死者の増加で2019~21年の間に世界の平均寿命は1.6年縮まり、新型コロナウイルスが死因の第2位となった。世界の死因の順位が大きく入れ替わったのは数十年ぶりとなる。
平均寿命の変化は、地域によって大きく異なる。東南アジア、東アジア、オセアニアでは、慢性呼吸器疾患、脳卒中、下気道感染症、がんによる死亡率の大幅な低下により、1990~2021年にかけて平均寿命が8.3年延びた。これらの地域では、新型コロナウイルスのまん延を強力に管理したことで、2019~21年にかけての同ウイルスによる平均寿命の低下はわずか0.4年に抑えられた。一方、同ウイルスによる平均寿命の低下が最も著しかったのは中南米で、3.6年だった。
下痢や腸チフスといった腸疾患による死者数が減少したことによる世界の平均寿命の延びは、1.1年と推定される。下痢性疾患による死亡率の低下により、サハラ以南のアフリカ東部では平均寿命が10.7年、南アジアでは7.8年延びた。世界の死因の1位である虚血性心疾患の年齢標準化死亡率は、1990~2021年の間に31.5%低下した。
論文を執筆した米ワシントン大学健康指標評価研究所(IHME)のリアヌ・オン博士は、各国が下痢と脳卒中による死者を抑えることに成功した一方で、新型コロナウイルスの大流行による平均寿命の低下が如実に表れたと述べた。
論文の著者によると、今回の研究は、新型コロナウイルスによる死亡を他の主要な死因と比較した初めてのものとなる。論文では、物理的な距離を取る措置が他の疾患の死亡率に影響を与えたり、医療機関の対応の遅れが新型コロナウイルスに直接起因しない感染症の死亡につながったりするなど、同ウイルスが死亡率に間接的な影響を与えた可能性もあると指摘されている。
ランセットが先に掲載した別の研究でも、新型コロナウイルスの流行によって世界の平均寿命が1.6年縮まったことが報告されたほか、同ウイルスによる死亡率の上昇が高所得国の中で最も高かったのは米国だったことが示された。
(forbes.com 原文)