細田氏によれば、フォツォ氏は「ポピュリスト」だという。常に、スロバキア世論の支持獲得や与党の利益を最大化することを考え、実践している。外交政策は、どの国・地域に対しても良い顔をする全方位外交を基本とし、「誰に対してもリップサービスをしている」(同氏)という。
フィツォ氏が演じる「反ウクライナ姿勢」は、あくまでもスロバキアの世論に配慮したものだという。細田氏はスロバキア世論について「ウクライナとスロバキアは隣国として複雑な歴史関係があるうえ、ウクライナに住むスロバキア系少数民族への扱いに対する不満も存在します」と語る。ウクライナメディアはフィツォ氏がこうした内情をウクライナ側に非公式な会談で説明したと伝えている。
4月7日にはスロバキア大統領選挙があり、フィツォ氏に近いペレグリニ氏が当選した。ペレグリニ氏は、「(大統領選で争った)親欧米派のコルチョク氏が勝てば、スロバキア軍をウクライナに派兵するかもしれない」と危機感をあおった。細田氏は「ウクライナに対して強硬に見えるフィツォ氏の姿勢は、ペレグリニ氏を当選させるためのポーズでもありました」と指摘する。
確かに、フィツォ氏は、「軍事的な手段は問題解決にならない」と訴えてきた。昨年10月の国民議会選挙でもウクライナに対する武器援助停止を公約に掲げ、勝利した。ウクライナへの武器無償支援の停止は、公約を実現したものだと言えるが、「すでに、スロバキアとして武器供与が可能な装備はすべて渡してしまったため、無償武器供与という選択肢がないのも実情」(細田氏)だ。フィツォ氏らは、武器をウクライナに売却する可能性は否定していないという。
フィツォ氏は、ウクライナとのエネルギー・鉄道インフラ連結強化や地雷除去、医療支援なども提案している。細田氏によると、フィツォ氏はウクライナを完全に敵視している親ロ派とは呼べず、外交政策として親ロシア・反ウクライナを明確にしているハンガリーとも大きく異なる。