欧州

2024.04.22

ロシア軍の「亀戦車」、実は地雷除去車両だった? 専門家が新説

ロシア製地雷除去ローラー「TMT-S」を装着した戦車。2016年9月、モスクワ州クビンカで(ID1974 / Shutterstock.com)

ウクライナのドローン(無人機)操縦士はこの2週間に、ロシア占領下の東部ドネツク市のすぐ西に位置するクラスノホリウカ方面で、ロシアがウクライナで拡大して2年3カ月近くたつ戦争で最も奇妙な部類に入る装甲車両を、少なくとも3両見つけた。

砲塔と車体を金属製の外殻でほぼすっぽり覆ったT-72戦車だ。大きな甲羅のような追加装甲を背負い、その縁から125mm滑腔砲を鼻のようにのぞかせた格好が亀のように見えることから、「亀戦車」というあだ名を付けられている。

これらの亀戦車はすべて、ウクライナ東部におけるロシアの傀儡勢力の元部隊で、現在はロシア軍の指揮下にある第5自動車化狙撃旅団に所属しているようだ。

この戦争ではロシア側もウクライナ側も、戦車などの車両をミサイルやドローンから防護するため、さまざまな追加装甲を施すようになっている。一般的なのはケージ(鳥かご)型やスラット(格子)状のもので、これらは付けても乗員の視界は妨げられず、砲塔の回転もあまり邪魔されない。

ところが亀戦車の場合、乗員がのぞき見ることのできる前方の隙間はわずかしかなく、おそらく砲塔も左右にほとんど回転できない。ひと目でわかるこうした欠陥から、当然こんな疑問が浮かぶ。第5旅団はいったい何を考えているのだろうかと。

英国の兵器史家マシュー・モスがひとつの回答を示している。亀戦車の「役割はどうやらブリーチャーのようだ」というものだ。

ブリーチャー(啓開車両)とは、地雷除去用のプラウ(すき)などを装備した工兵車両のことで、ほかの車両が敵陣近くまで接近して攻撃できるように、地雷原を先導して走るのが主な任務だ。プラウなどで地雷を掘り起こしながら進む間、敵の砲射撃にもさらされることを想定して、分厚い装甲を備える。

米陸軍は世界最高峰のブリーチャーを保有している。重量70t近くのM1150アサルト・ブリーチャー・ビークル(ABV)だ。ABVは簡単に言えば、M1エイブラムス戦車から主砲を取っ払い、プラウなどの地雷除去器具を取り付けたものだ。米国は昨年後半、ウクライナにABV数両をひそかに譲渡していた
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翻訳・編集=江戸伸禎

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