欧州

2024.04.21

ウクライナ軍、ATACMSでクリミアのロシア軍基地を集中攻撃 甚大な被害

2022年5月、ラトビアのアダジで行われた北大西洋条約機構(NATO)の軍事演習でミサイルを発射する多連装ロケットシステム(Karlis Dambrans / Shutterstock.com)

米国のジョー・バイデン政権は3月12日、ウクライナへの3億ドル(約460億円)分の兵器供与を唐突に発表した。業者との以前の契約を見直して資金を捻出したとされるこの兵器供与は、下院共和党の一部勢力によってウクライナへの新たな支援が阻まれ出す前に、議会で承認されていた資金を用いた最後の供与分だった。

5週間後、ウクライナは供与された兵器を有効に使った。

少数が追加供与されたと伝えられていたATACMS弾道ミサイルのM39型だ。ウクライナ軍は16日から17日にかけての夜、その一部、もしかすると全部をロシア占領下のクリミアにあるジャンコイ航空基地に向けて発射した。

被害は甚大だった。ウクライナの前線から南へ160kmほどに位置する同基地を地上から撮影した画像から、ロシア軍のS-400長距離地対空ミサイルシステムの発射機少なくとも4機が失われたことが確認できる。ウクライナ軍参謀本部はさらに、S-400の管制センターと貴重な防空レーダー4基も破壊されたと報告している

ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)によると、ジャンコイ航空基地は1個ヘリコプター連隊と3個攻撃機飛行中隊の拠点となっている。つまり数十機の航空機が発着している。とはいえ、今回の攻撃でこれらの航空機が撃破されたり、損傷したりしたのかは不明だ。ウクライナ軍参謀本部によれば、ロシア側は「被害を受けた航空機や人員の数を徹底的に隠している」からだ。

ウクライナ軍参謀本部が18日に公開した動画には、南部ヘルソン市の上空と思しき夜空を、7、8発のM39が飛んでいく様子が映っている。射程160km強のM39は全長約4mの筐体内に擲弾サイズの子弾950個を内蔵する。今回の攻撃では、最大8000発近くの子弾がロシア軍の基地に降り注いだもようだ。

ウクライナ軍はM39を発射可能な2種類のロケット砲をどちらも保有する。装輪式の高機動ロケット砲システム(HIMARS)と装軌式の多連装ロケットシステム(MLRS)だ。HIMARSからは重量2tのM39を1発、MLRSからは2発発射できる。ウクライナ軍はHIMARSとMLRSをそれぞれ発射機4機の小隊で運用することが多いので、ジャンコイに対する攻撃ではMLRSを使った可能性が高い。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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