経済

2024.05.01 13:30

金融政策の「正常化」

3月19日に、日本銀行は、マイナス金利の解除、イールドカーブ・コントロールの撤廃を決定した。さらに、ETFとJ-REITの新規買い入れの終了を決定したが、長期国債買い入れは継続するとした。事実上、異次元の金融緩和は終了して、短期の政策金利を操作する、「通常の金融政策」が行われることとなった。いわゆる、金融政策の「正常化」の第一歩が踏み出された。
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そもそもの異次元の金融緩和導入の背景は、それ以前の長期停滞とデフレがある。1998年ー2012年までの平均インフレ率はマイナスで、マイルドなデフレ状態にあったといえる。

2012年12月の総選挙で自民党が圧勝して、3年間の民主党政権が終焉、安倍政権が誕生した。安倍総理は、民主党政権の経済低迷、デフレ悪化の責任の一端は日銀の金融政策にあるとして、2013年1月に2%のインフレ目標政策の導入、3月にはインフレ目標政策を支持する黒田東彦氏を日銀総裁に指名して異次元緩和が始まった。

しかし、インフレ目標導入から9年間、(消費税増税調整済み)インフレ率は、目標である2%を超えることはなかった。その理由はいくつか考えられるが、有力な説はつぎのようなものである。2012年まで長く続いた経済停滞、物価の下落傾向のなかで、価格引き上げはできない、という企業の価格付け行動が横並びで形成された。それが、これからも物価が上がることはないと考える、ゼロ期待インフレ率を形成する。そうすると、労働組合や一般労働者も、価格が上がらないなかで、賃上げは要求できないと考えてしまった。
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特に1997ー98年の金融危機で大銀行が破綻して、大企業でも解雇されることがあるとわかると、賃上げの要求は一気にしぼみ(ゼロ賃上げ要求)、雇用の維持が労働者・労働組合の最大の目標になった。こうして、「ゼロ(インフレ)→ゼロ(インフレ期待)→ゼロ(賃上げ)→ゼロ(インフレ)」という循環的均衡が形成された。2013年から始まった強力な量的質的緩和でも、「0-0-0」均衡は打破できなかった。
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文=伊藤隆敏

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