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2024.04.25 16:00

スタートアップに広い門戸を 情熱を交差させるSHIBUYA QWSの一手

QWS STARTUP AWARD #2のファイナリストと最終審査員。会場は多くの参加者で満員となり、注目の高さをうかがわせた。後列右はSHIBUYA QWSエグゼクティブディレクター野村幸雄。

「QWS STARTUP AWARD」は、シード・プレシード期のスタートアップなら実績問わず誰でも応募できる異色のアワードだ。主催する「SHIBUYA QWS」の狙いはどこにあるのか。今年3月に開かれた第2回アワードの模様とともに、その答えをお届けする。

 SHIBUYA QWS(渋谷キューズ、以下、QWS)は、渋谷駅直結の商業施設・渋谷スクランブルスクエアの15階に、2019年11月に開業した会員制の共創施設だ。QWSとは「Question With Sensibility (問いの感性)」の頭文字。ビジネス、アート、サイエンス、エンターテインメント――さまざまな領域のプロジェクトが問うことにより交差し、社会に変革を起こすアイデアを生み出す。

その化学変化を可能にする場所であることが、QWSの掲げる重要なミッションのひとつだ。QWSのエグゼクティブディレクターであり、2014年から立ち上げにかかわってきた野村幸雄(さちお)は「QWSとは、まだ世の中にはない社会価値を創出する場」なのだと語る。

「カオスな土地」渋谷で好奇心と挑戦を大事にする

「開業前、海外視察した際に印象的だったのが、多様かつ、フラットな人々の関係性でした。学生もプロフェッショナルも垣根なく議論をして、より良いモノをつくり出すために対等な関係性を築く風通しの良さがあった。日本ではどうしてもバックボーンありきで、フラットな関係性を実現するのは難しいと感じることが多いですが、渋谷なら、と思ったんです。さまざまな人が行き交う、ある意味ではカオスな土地である渋谷にあるQWSなら、そういう関係性をつくりやすいのではと」

こうして生まれたQWSが、開業3年目となる2022年にスタートさせたのが、スタートアップ向けのピッチアワード「QWS STARTUP AWARD」だ。野村はその狙いをこう語る。

「ピッチアワードはどうしても、いかに事業化していくのかが大きな評価軸になります。しかしこのアワードが最も大切にしているのは社会を良くするためのビジョンをもっているかどうか。どんな事業であろうと、またロングスパンの構想段階であろうと区別はしません。挑戦の一歩を踏み出すための後押しをすることが、私たちの役割だと考えて開催しています」

第2回となる今年の「QWS STARTUP AWARD #2」には、前回比で104社増の178社が応募。ベンチャーキャピタルなどが選考を重ね、7社のファイナリストに絞られた。好奇心と挑戦を重視するとあって、審査員が主にエンジェル投資家であるのも特長だ。最終ピッチは3月中旬、都内で開かれた。

異種混合の白熱ピッチ「AI防犯アプリ」が最優秀賞に

医療や福祉に特化したモビリティサービス、ごみの効率的な資源化を可能にするプラットフォーム、波の力を利用した海洋再生エネルギーの開発、アフリカ農村地帯へのデジタルサービスの提供……。どんなスタートアップも参加できるアワードとあって、出揃ったファイナリストの事業はQWSらしい多彩さを見せた。各社による熱のこもったピッチは、起業家たちの目が解決するべき課題を確実にとらえていることを強く会場に印象づけた。

最優秀賞に輝いたのは、犯罪から子どもを守るためのAI防犯アプリ「SASENAI(サセナイ)」とウェアラブルデバイスを開発するVxTech。代表の小野衣子は、自身の性被害の経験から、子どもが安心して遊べる社会、安全に家に帰ってこられる当たり前の社会を実現したいと開発目的を説明した。
最優秀賞を受賞したVxTechの小野衣子。ランドセルに付ける防犯デバイスを紹介。

最優秀賞を受賞したVxTechの小野衣子。ランドセルに付ける防犯デバイスを紹介。

冷静に力を込める小野のピッチに「解くべき課題が明確で、サポートしていきたいという気持ちにさせられた」「本当に世の中に必要なもの。一刻も早く社会実装させたい」と審査員も絶賛した。受賞後、小野は「ひとりでも多くの人に現実を知ってもらい、共感してもらいたいという思いで挑んだ。その結果を評価していただけたことをうれしく思う」と喜びを語った。

優秀賞は、それぞれ分野を異にする2社に与えられた。1社は、がん細胞の生存戦略を破綻させるという世界初のメカニズムで、がん治療法の確立を目指すFerroptoCure。社会的なインパクトの大きさと、ユニコーン企業になりうる可能性を評価されての受賞となった。

もう1社は、障害児も健常児も垣根なく使えるインクルーシブなプロダクトの開発に取り組むHalu。Halu代表の松本友理は、「ひとつのプロダクトだけではなく、さまざまな分野でのインクルージョンを実現していきたい。そのためには、皆さんのご協力が必要です」と連携への期待を述べた。

このほか協賛パートナー16社も、それぞれに賞を贈った。今回の選考過程を振り返り、野村は次のように語る。「二次選考では、審査ではなくメンタリングのような場面も多く見られました。プロジェクトも起業家自身も磨き上げられていくようでしたし、最終選考もファイナリストが多彩なぶん、審査が大いに盛り上がりました」

野村は、受賞そのものではなく新しいつながりを生み出すことに意義があるとも話す。ピッチ間や授賞式後など、ネットワーキングの機会も多く設けた。「受賞はひとつの評価ではありますが、大事なのは起業家や投資家、企業や自治体がそれぞれにつながってもらい、まだ見ぬコラボレーションをしてもらうことです。多彩で多様な人たちがつながれる風土を、渋谷から日本全体に広げていきたいと思っています」

QWS STARTUP AWARDは、来年以降も開催される予定だという。社会を変えたいという志が交わる場所は、好奇心さえあれば、どんなスタートアップにも開かれている。

SHIBUYA QWS
https://shibuya-qws.com

QWS STARTUP AWARD #2

「社会を一歩促進する可能性があるかどうか」を審査基準に、事業の分野、領域を問わず、社会に新しいイノベーションを生み出すスタートアップに焦点を合わせたピッチアワード。「新しい社会価値の創出」を支援するため、最終審査員をエンジェル投資家ら豊富な事業経験や経営の知見がある者のみで構成しているのが特長となっている。最優秀賞受賞者には、渋谷スクランブルスクエア特別広告パッケージ(200万円相当)、活動支援金100万円、SHIBUYA QWS利用権6カ月分を贈呈する。

このほか、協賛パートナーによる賞品や事業共創機会などの特別賞が各種用意されている。2022年11月に開催された第1回の応募総数は74社。第2回の今回は、応募総数が大幅に増えて178社となった。第2回のファイナリスト7社はピッチ順に、mairu tech、 FerroptoCure、Yellow Duck、Halu、Dots for、VxTech、JOYCLE。

Promoted by 渋谷スクランブルスクエア | text by Ayako Tajiri | photograph by Yutaro Yamaguchi | edited by Asahi Ezure