一人ひとりが自分にできる範囲で
溝渕:私も、ovgoでヴィーガン活動や環境保全活動に一生懸命取り組んでいる方と触れ合うなかで、難しさを感じました。すべての人がすぐにライフスタイルを変えるのは難しい。既存のルールもリスペクトしつつ、「0か、100か」ではなく、まずは一人ひとりが自分にできる範囲で取り組んでいくことが、結果的に業界全体を変えていく推進力になると思っています。三浦:寄付というとお金持ちがする行為と思われることがありますが、そんなことはありません。遺贈寄付は「亡くなった後に残った自分のお金から寄付する方法」なので、老後のお金の心配をすることなく、誰でも取り組める点が特徴です。また、1万円などの少額からでも可能で、相続税の課税対象からも外れます。
これまでは「遺贈寄付」という選択肢やその方法が認知されていませんでした。日本では、35年には金融資産の70%以上を高齢者が保有するようになるといわれています。遺贈寄付のように、一人ひとりが「私にもできる」と思える選択肢を提示していくことが、社会に新しい流れを生み出していくうえで大切だと感じます。
溝渕:選択肢を提示して、知ってもらうことは確かに重要です。例えばヴィーガンについても、若い世代の方が自然と受け入れているように感じます。よく「Z世代は意識が高い」といわれますが、それは、物事に対するバイアスがないからこそだと思います。だからこそ、彼ら彼女らに全方位の選択肢を知ってもらうような活動をしたい。それがovgoを通して強く感じたことであり、新組織でも行いたいことです。
反田:僕は誰しもが何らかの才能をもって生まれてきたと思っていますが、選択肢が少ないとその才能と出合えるかもわからない。選択肢を提示することは、どのような業界でも重要だと感じます。
三浦:ただ、同時に私たちが忘れてはいけないのは、スイッチを押すだけで電気がついたり、蛇口をひねるだけで飲み水が出てきたり、日々を生きていると当たり前のように感じてしまうすべてのことが、昔の世代の人が「より良い世界」のために取り組み続けてきた結果であるということです。今、私たちが手に取れる「選択肢」は、これまで生きてきた人たちがつくり上げてきた「結晶」なのです。
反田:確かに。僕たちはその上に乗って、今を生きています。だからこそ、未来の世代、さらにそのまた先の世代が成長したときに、今以上に多くの生き方を選べる世の中にしていかなければいけませんね。
ここから3人の起業家の座談会はさらに深掘りしたテーマへと話が進みます。多彩な起業家たちのビジョンに共通しているフィロソフィーとは何か?座談会の続きは、本日発売の『Forbes JAPAN』2024年6月号にてお読みいただけます。