起業家

2024.04.25 08:00

「未来の世代」のためにどう行動すべきか?多彩化する起業家が描く「わたしたちのよき未来」

三浦美樹(以下、三浦私は司法書士として主に相続登記にかかわる業務を行ってきましたが、19年に日本承継寄付協会を立ち上げ、相続財産の一部を社会貢献活動を行う非営利組織などに寄付をする「遺贈寄付」の推進活動をしています。

現在、国内の年間死亡者数は156万人(22年、厚生労働省調べ)で、相続される金額は約50兆円と推計されています。平均寿命は80代のため、相続人である子どもも60代以上である場合がほとんど。老後の備えとして、亡くなるまで銀行にお金を預けっ放しにしてしまう方も多いため、結局「使われないお金」が高齢者間で回り続けることになってしまう。そのお金が若い世代や、本当に困っている人の元に少しでも届いたらいい。

そんな思いから同協会では、遺贈寄付の専門家育成や自治体との連携、遺贈寄付先との出会いを届ける情報誌「えんギフト」の制作、遺言書作成にかかる費用を助成するフリーウィルズキャンペーンなどの事業に取り組んでいます。このキャンペーンは23年から開催していて、現在までに遺贈寄付の遺言書を50件作成。すべて実現すれば、助成金250万円に対して約470倍の総額11億7800万円の遺贈寄付を創出できます。レバレッジの効く寄付ともいえます。年間相続額約50兆円のうちたった5%が遺贈寄付されるだけでも、2.5兆円になります。

私たちは思いやりを次世代につなぐ遺贈寄付を文化として広げ、50年までに累計50兆円のお金の流れを変えて「思いやりが循環する社会」を実現したいと思っています。

反田恭平(以下、反田僕はピアニスト、指揮者として活動するなかで、21年にプロデュースしているジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)を株式会社化しました。現在20人の奏者が在籍しており、音楽に専念できる環境を整えています。社員として給料を支払いながら、その人に合った活動の仕方を模索するため、契約形態を調整。一人ひとりの活動・生活状況を踏まえてきめ細かい査定制度を導入し、演奏家集団としての自主性、自立性も重視しています。

国内オーケストラの多くは公益財団法人や公益社団法人が運営していますが、JNOは公演に限らず、オンラインサロンの運営や学校設立という目標があるため法人化しました。オーケストラの法人化は国内初の試みでしたが、3期目で黒字化を達成しています。

音楽家の給料はいくらかご存じでしょうか。世界的奏者だと2時間の公演1回につき3000万円レベルの出演料がある一方、学生や若手演奏家などは5万円前後の謝礼を手にする程度。費やしてきたお金や時間、積み上げてきた技術や経験を考えると決して高いとは言えず、ゆとりをもって生活できている音楽家は多くありません。加えて、多くの音楽大学で入学者数が減少傾向にあり、クラシック音楽業界が衰退の一途をたどってしまうのではないか、という危惧もあります。

才能ある若手音楽家を経済的に支え、音楽家が永続的に活躍できる場所をつくり、クラシック音楽の伝統を後世につないでいける環境もつくりたい。30年には海外からも学生が留学しに来るような「トップクラスの音楽アカデミー」の設立を見据え、事業を拡大しています。
反田恭平◎1994年生まれのピアニスト、指揮者、実業家。2012年、第81回日本音楽コンクールで第1位入賞、併せて聴衆賞を受賞。16年のデビュー・リサイタルは、サントリーホール2,000席が完売。21年には「第18回ショパン国際ピアノコンクール」で日本人では約50年ぶりに第2位を受賞する。24年には大河ドラマ「光る君へ」のオープニング曲のピアノ演奏を担当。

反田恭平◎1994年生まれのピアニスト、指揮者、実業家。2012年、第81回日本音楽コンクールで第1位入賞、併せて聴衆賞を受賞。16年のデビュー・リサイタルは、サントリーホール2000席が完売。21年には「第18回ショパン国際ピアノコンクール」で日本人では約50年ぶりに第2位を受賞する。24年には大河ドラマ「光る君へ」のオープニング曲のピアノ演奏を担当。

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文=門岡明弥 写真=帆足宗洋(AVGVST) スタイリング=千葉 良(AVGVST)、川田真梨子 ヘアメイク=Kunio Kataoka (AVGVST)村田真弓

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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