川崎重工の加賀谷博昭執行役員は、2030年には労働人口として644万人が不足する(パーソル総合研究所調べ)ことを背景に、AI活用による業務効率化と、同社の売上収益の14.6%を占めるロボット事業活用に言及。こうした事業を促進するため、マイクロソフトとの共創でインダストリアル・メタバースの実現や、生成AIを活用したロボットの開発などの例を示した。
ユーハイムの河本英雄代表取締役社長は「お菓子には世界を平和にする力がある」とバームクーヘン製造AIロボ「THEO」を紹介。同社独自のDX、デジタル・トランスフォーメーションならぬ「ドリーム・トランスフォーメーション」でお菓子業界のあり方に変革をもたらすとし、レシピに著作権を持たせ「レシピ・バンク」を創造するため、マイクロソフトとの伴走事例も提示した。
ユーハイムの「THEO」は実際に同社内で活用されるには至らなかったものの、このAIロボが街のお菓子屋さんに派遣され経営難から救った事例や、養鶏農家に残る廃棄卵を活用しお菓子屋の新規事業事例などを挙げ、これが現在子会社によるAIロボ菓子職人派遣業につながったとした。THEOは神戸市中央区において特別住民票を取得。地域に「市民権」を得たAI事例とまでなっている。
ラボ内には、パイオニア社がラボとの共創により開発した音声対応の多機能「ドライビング・パートナー」NP1やソニーのエッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」なども展示されており、事例には事欠かない様子が伺えた。
平井所長によると、実は世界的にAIラボを活用した事例は、ほぼ守秘義務遵守が必要な顧客社内ソリューションが多く、お披露目できる例が極めて少ないとのこと。しかし、日本では社外で利用できるサービスに生かされているため、紹介可能な例としてショーケースになっているそうだ。「むしろ、日本ではこうしてオープンにして頂いて、PRになって大変ありがたい」と感謝の言葉を口にした。
AIの利活用について、日本は世界に対し圧倒的に遅れている。ここ数年、そう思い込んできた。だが、神戸市を拠点としたマイクロソフトのAIラボ活用を目の辺りにし、日本は時代的な窮地から脱出できる可能性を、自治体発信という観点からも、まだまだ秘めているのではないかと考えさせられた。