「宇宙空間でのテントの可能性」に学生が挑戦 宇宙×膜構造建築コンテスト

プレスリリースより

学生を対象とした「宇宙×膜構造建築コンテスト」がはじめて開催され、受賞者が発表された。宇宙での膜構造の応用アイデアを募ったものだが、膜構造とはなにか。平たく言えばテントだ。外壁に布などの薄い膜材を用いた建造物で、東京ドームも膜構造に含まれる。宇宙という課題は非常に高度なものであり、学生たちは膜構造に関してはほぼ素人。しかし、その奇抜ながら具体的なアイデアは専門家たちを大いにうならせた。

このコンテストを主催したのは、山口県を拠点にテント倉庫の建設を展開する山口産業。全国の専門学校、短大、大学、大学院の学生を対象にアイデアを募り、エントリー総数は49件。3月15日の最終プレゼンにて、最優秀賞1点と優秀賞3点が選ばれた。

最優秀賞 「寄生 ~寄り、生きる~
古田摩実さん (お茶の水女子大学 )

月や火星ではなく、生物に必要な元素を多く含む、地球軌道周辺の「保守的なハビタブルゾーン」に存在する小惑星に着目。そこに「寄生」するというアイデアだ。二重の膜構造の間に現地の砂を充填して強度をもたせたドームをお椀状の地面に使い、回転による擬似重力を発生させて快適な居住環境を作る。資源の採掘が終わると別の小惑星に移動し、居住空間を拡大していく。小惑星上でのお風呂や洗濯の方法など細かいアイデアも盛り込まれている。審査員からは、膜構造の特性をよく理解していると評価された。、また、あえて手描きイラストを使ったプレゼン資料も好感が持たれた。

優秀賞 「THE UMBRELLA 
野下朔矢さん、杉山聖斗さん(明星大学)

火星に傘状の膜構造による巨大な居住空間を作り、地下水を使って火星に雨を降らせるというアイデア。雨が降ることで火星での生活が豊かになるということだ。

優秀賞 「CARAVANS ON MARS
黒田すずなさん、-瀬仁一郎さん、南谷 陽平さん、瀬上嵩斗さん(岐阜工業高等専門学校)

移動可能な膜構造建築で、火星の都市を結ぶ行商人(キャラバン)の生活を提案している。非定住の暮らしが、人間同士の出会いを生み、地球上では起こりえない生活へと拡張していくとのことだ。

優秀賞 「小惑星社会で叶えるUnity in Diversity
松野ななさん(京都大学)、石田海都季さん(北海道大学大阪大学)、近藤愛莉さん(大阪大学)

マハトマ・ガンジーが示した「多様性のなかの統一」という課題を、重力や組成が異なる小惑星と膜構造を組み合わせることで解決するというアイデア。大きな膜構造建築のなかにさまざまな施設があり、高齢者や子どもも生活しやすい空間を作っている。小惑星の多様性、低重力による体への負担や脱出の際のエネルギーを低減できるなどのメリットを活かしている。

選外となったがファイナリストとして残ったチームが提案した、宇宙デブリを資材として活用する方法なども評価が高かった。山口産業代表の山口篤樹氏は、「さまざまな物語の中で膜の無限の可能性を感じ、30年以上膜構造に携わってきた私も知らない新しい膜構造の領域を見せていただいた」と話している。

山口産業は、50年以上培ってきた技術と経験を異業種の知見と掛け合わせ、「災害、農業、都市における課題の解決」を目指すプロジェクト「MEMBRANE LAB.」を推進している。今後もこうした膜構造コンテストを開催して、膜の可能性を拡張したいということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事