「AI吹き替え」のユニコーン
今年の選出者の中で資金調達額が最も多かったのは、1億100万ドル(約169億円)を集めた、共に29歳のマティ・スタニシェフスキとピョートル・ダブコフスキらだ。ポーランドで育った2人は、米国映画の吹き替えの質が低いことに不満を抱き、2022年にAI音声技術企業のElevenLabs(イレブン・ラブス)を創業した。同社は、2023年1月に音声合成プラットフォームのベータ版をリリースし、オーディオブックやビデオゲーム向けに29言語で人間のような音声を作成している。同社の評価額は11億ドル(約1696億円)に達し、ユニコーンの仲間入りを果たした。他の選出者たちは、気候変動やサイバーセキュリティなどの世界的な問題を解決するためにAIを活用している。ベルギーに本拠を置くDockflow(ドックフロー)を創業した28歳のポーリン・ヴァン・オスタイエンと29歳のミヒエル・ヴァリーは、海運業界向けにリアルタイムでコンテナ追跡とCO2排出量モニタリングが行えるAIプラットフォームを提供している。現在、同社は新たな資金調達ラウンドを終えようとしており、評価額は500万ドル(約6億円)に達する。
また、ロンドンに本拠を置くマッピング会社Kestrix(ケストリックス)の共同創業者で26歳のルーシー・ライオンズは、サーマルカメラを搭載したドローンとAIを使って建物の3Dの熱損失モデルとエネルギーレトロフィット計画を作成し、CO2排出量の10%を占める冷暖房機器の課題解決に取り組んでいる。
サイバーセキュリティ企業Secfix(セクフィックス)の共同創業者の29歳のファビオラ・ムンギアは、自動化技術を用いて企業がデータ保護法に準拠できるよう支援している。同社は2021年の創業以来、コメルツ銀行のベンチャーキャピタル部門であるオクトパス・ベンチャーズから420万ドル(約6億4000万円)を調達している。
29歳のシモ・レンハンデスは、パリに本拠を置くfolk(フォーク)の共同業者だ。同社は、顧客データと顧客との交流データを一元管理し、よりパーソナライズされた営業アプローチを可能にするオールインワンのCRMツールを提供している。同社は、これまでに900万ドル(約13億円)以上を調達しており、顧客数は1800社を超える。ユーザーは、フォークのAI搭載プラットフォームを使うことで潜在顧客に優先順位をつけたり、フォローアップのリマインダーを設定したりすることができる。同社は、CRM大手のセールスフォースなどと競合している。
(forbes.com 原文)