欧州

2024.04.18 09:30

ウクライナ戦争で急速に進化するドローン、その最新戦術とは

木村拓哉
2789
ロシア軍はまた、ドローン同士の空中戦でより効率的に攻撃できるようドローンを改造している。ロシアのあるグループは3月に「ラム(Ram)」と呼ばれる新型のドローンを披露した。このクアッドコプターには、敵機のローターのブレードに難なくダメージを与えられるよう、金属製のスポークが取り付けられている。この種の改造は、オランダで毎年開催されている、ドローン撃退を競うイベントに触発されたものかもしれない。相手陣地の旗を奪うゲームに似たこの競技は、空中での戦闘で相手のドローンを排除する必要があり、ドローンには槍や鎖などの武器が搭載されている。

ウクライナ軍のドローン戦術

ウクライナ軍もロシアの攻撃ドローンに対して同様の戦術を用いている。ウクライナのFPVがロシア軍の自爆ドローン、シャヘド136を迎撃している映像はまだない。米国がウクライナに供与した、特定の目的を想定して作られた迎撃用ドローンがシャヘド136への攻撃に成功しているかもしれないが、安全上の理由から詳細は公表されていない。

ウクライナ軍のドローン操縦士がロシア軍の小型ドローンを撃墜した動画は数多くあり、有名なBirds of Magyarの映像や、ドニプロ川上空で双胴機のドローンを撃墜した映像などがある。

こうした迎撃が行われている理由は明白だ。防空ミサイルは数十万ドル以上する希少かつ貴重なものであり、巡航ミサイルのような大きな脅威のために温存されている。一方で数百ドル程度のFPVは潤沢にあり、これらを最大限用いることは理にかなっている。

ウクライナが現在使用しているものより大型で航続距離の長いFPVを開発すれば、これらも防空目的で使われるかもしれない。ゼレンスキー大統領はこのほど、新型の自爆ドローン「ウクロランセット(Ukrolancet)」の性能について説明を受けた。このドローンは地上の標的を攻撃するだけでなく、低速で飛ぶ機体、特にロシア軍のオルラン10やシャヘド136などの無人偵察機やドローンを標的とすることができる。

ドローン戦争

戦術は常に進化している。ロシア軍がバーバ・ヤガーを迎撃し始め、ウクライナ軍はバーバ・ヤガーに護衛を付けている。ウクライナ側の映像では、クアッドコプターがバーバ・ヤガーを守り、迎撃を試みるロシア軍のドローンを撃退しているように見える。このドローン戦術は第1次世界大戦というより第2次世界大戦の様相をすでに呈している。

ベンデットは、バーバ・ヤガーが護衛のFPV一団と行動を共にしているところが目撃されたというロシア側の指摘に言及している。バッテリーの残量が少なくなったFPVはバッテリー交換のために操縦士の元に戻り、その間、他のFPVが任に当たることで護衛は継続される。FPVは標的に接近する偵察機として機能するだけでなく、地上目標を攻撃し、敵のドローンから守る遮蔽物にもなる。

ドローン操縦を趣味とするウクライナの数人がクアッドコプターを使ってロシア軍の陣地を偵察していた2年前と比べると、事態は大きく進展している。投入されるドローンの数が数百万機に増え、戦場をますます支配するようになるにつれて、同様の速度で事態は今後も進展し続けると予想される。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事