欧州

2024.04.17

ウクライナ軍で痛恨の「内紛」発生、要衝の部隊入れ替え 火力弱体化

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ウクライナ軍は何年もの間、極右の過激派の一掃に努めてきた。ウクライナ国防省と過激派の最新の衝突は、これ以上ないほど悪いタイミングと場所で起きてしまった。

数週間のいざこざの末、国防省はこの週末、陸軍の第67独立機械化旅団を配置転換し、同旅団の幹部も入れ替えた。第67旅団は、ウクライナ東部ドネツク州でロシア軍に最も狙われている都市の、最も狙われている地区を保持していた。チャシウヤール市の運河地区だ。

現在、第67旅団(の残存部隊)は後方に移され、運河地区の防衛はウクライナ領土防衛隊の旅団が引き継いだもようだ。

問題は、領土防衛隊のどの旅団も、機械化旅団に匹敵するほどの火力を持たないという点だ。しかも、運河地区を守る部隊は、はるかに大規模なロシア軍部隊が迫ってくるなかで、多くの火力が必要な状態にある。国防省は、ドローン(無人機)部隊の増援に望みをかけているようだ。

チャシウヤールは重要な場所だ。かつて工業で栄え、ロシアが2022年2月にウクライナに全面侵攻する前には1万2000人ほどが暮らしていたチャシウヤールは、戦略的に重要な都市であるコスチャンティニウカやクラマトルシクに至るルートを見下ろせる高台にまたがっている。ウクライナに進駐している40万人規模のロシア軍が、2月半ば、廃墟と化しているドネツク州アウジーウカを占領したあと、チャシウヤールに狙いを定めたのも、この地理的なメリットが理由だ。

チャシウヤールの東端には運河が南北に走っていて、一種の自然の防御壁になっている。ただ、運河の向こう側、つまり東側に、運河地区と呼ばれている小さなエリアがあり、ロシア側はこの地区を押さえることができれば、運河を渡って市の中心部に侵入する足がかりにできる。

「仮にウクライナ側がチャシウヤールの支配権を失えば、深刻な結果になりかねない」とウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは解説している

この地区を防衛する大変な任務を任させていたのが、第67旅団だった。第67旅団は、極右の政治団体「右派セクター」の一部門であるウクライナ義勇軍団を中心に結成された、2000人規模の志願兵部隊である。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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