テスラ株は3%下落し、2023年4月27日以来の日中最安値となる1株あたり約155ドルを付けた。一時は4%下げて年初来の下げ幅を約38%に広げた。
時価総額も7900億ドル(年初のレートで約112兆円)から約4980億ドル(77兆350億円)へと大きく目減りし、株式市場が全体として上昇トレンドにある中で対照的な推移となっている。同社の時価総額は2021年後半のピーク時には1兆ドルを超えていた。
テスラ株は4月に入ってからの12日間の取引日のうち、6取引日で2%超下落し、投資家の肝を冷やしている。
直近の下落は、テスラの第1四半期納入台数がパンデミック以降初の減少となり、さらに全世界で人員の10%以上を削減する計画が報じられたことが影響した。テスラは2024年第1四半期の決算報告を1週間後に控えているが、過去にたたき出してきた爆発的な増益や売上高の伸びと比較して、失望する結果が予想されている。
ドイツ銀行のアナリスト、エマニュエル・ロズナーは16日、顧客向けレポートでテスラの収支設定への懸念を表明。かねて期待されている低コストEVではなく、自動運転タクシーなどのより抽象的な取り組みに重点が置かれるならば、「投資テーマが変わりうる戦略更新」の可能性があると警告した。
テスラが低価格EVの発売を無期限に延期したり中止したりした場合、同社は「痛みを伴う株主基盤の移行に耐えなければならないだろう。テスラの圧倒的なEVシェアとコスト優位性を重視してきた投資家がさじを投げ、最終的には投資時間軸の長いAI・テック投資家に取って代わられる可能性がある」とロズナーは指摘している。
ロズナーはテスラの目標株価を約20%の上昇を示す189ドルに据え置いたが、世界的に厳しさを増すEV市場の中でテスラがシェアを失い、中核であるEV事業の業績が先細りしているとのウォール街の懸念に同調している。特に、ファンダメンタルズ重視の投資家にとって最大の魅力であったテスラのキャッシュ創出力は枯渇している。2023年のフリーキャッシュフロー(FCF)は44億ドル(約6800億円)で、2022年の76億ドル(約1.1兆円)を大きく下回った。アナリストのコンセンサス予想では、2024年のキャッシュ収入は36億ドル(約5569億円)にとどまり、2020年以降最低となりそうだ。
フォーブスの推計によると、テスラ最高経営責任者(CEO)で個人筆頭株主であるイーロン・マスクの資産額は、年初から660億ドル(約10兆2000億円)減少した。
テスラは、2020年初頭から維持してきた世界で最も時価総額の高い自動車会社の地位を失う恐れもある。16日現在の時価総額は、2位のトヨタ自動車(3200億ドル、約49兆4900億円)を約1700億ドル上回っているが、この差額は昨年末には約5400億ドルあり、確実に縮小しつつある。
(forbes.com 原文)