「負け組」の都市は?
知名度の高いITハブに人材が集まりにくくなっている。「負け組」トップ3はサンフランシスコ、シアトル、ボストンだ。生活費の高さが主な要因とみられているが、ニューヨークは例外で、家賃が天文学的に高騰しているにもかかわらず、2019年以降に移転したIT人材のうち最も多くを呼び込んだ。このほか、かつてITセールスの中心地とみなされていたアリゾナ州の人材数は、過去5年間で7%縮小した。
AI人材が多いのはやはりシリコンバレー
テック労働者がシリコンバレーから流出する動きが広がってはいるものの、人工知能(AI)や機械学習を専門とする人材の多さでは、依然としてサンフランシスコ・ベイエリアを筆頭にシリコンバレーが独り勝ちの状況だ。「全人口に占めるテック系人材の割合では、サンフランシスコが群を抜いて全米1位だ。今日何より必要とされているAI人材も最多を誇る」と、シグナルファイアのパートナーで人事責任者のヘザー・ドーシェイは説明する。「その優位性はまったく脅かされていない。テック人材の密度という点では、今なお最大の人口を有している」
2023年10月、ChatGPTの親会社であるOpenAIは、2018年以来サンフランシスコで最大級となるオフィス賃貸契約を結んだ。ミッションベイ地区のオフィススペースは約4万6500平方メートルに及ぶと地元紙サンフランシスコ・クロニクルは報じている。
また、ペンシルベニア州ピッツバーグとオレゴン州ポートランドは疑いなくAI人材の急成長拠点になりつつある。
テック業界で創業、選ぶべき拠点は
創業後に競争力を維持するためには、オースティン、ニューヨーク、ダラスといった成長著しいITハブを拠点とし、人材の流入を最大限に活用することを検討すべきだろう。2022年以降にレイオフが相次いでいることからもわかるように、IT大手はもはや安定した働き口ではなくなっており、VCの支援を受けるスタートアップに魅力を感じるテック系労働者が増えている可能性がある。また、リモート人材の活用や、本社と複数のサテライトオフィスを構えることも検討するとよい。現在の労働市場は買い手優位だが、需要の高いAI人材は例外となっており、優秀な人材を引き付けるには、名高いIT大手と競合する分野ほど創造的な思考で柔軟な働き方を提供する必要がある。
シグナルファイアは企業に対し、既存の労働力の中から必要とする人材を発掘するよう助言している。スキルアップや社内での部署移動の機会があれば、従業員はスキルを向上させ、重要な技能を習得して仕事の範囲を広げることが可能になる。企業は人材を外部に求める必要がなくなり、従業員の成長を促すこともできる。
(forbes.com 原文)