音楽家の江﨑文武、キュレーターの髙木遊、建築家の津川恵理。それぞれの領域の第一線で活躍しながらも、積極的にクリエイティブ人材の育成に励んでいる。その動きを先導しているのが、武田悠太 (LOGS代表取締役社長)が運営するGAKUだ。
GAKUの教室がある渋谷PARCOには、日々熱量の高い10代の学生たちが集う。少し年上のプロのクリエイターとの出会いに刺激を受け、将来の活動の「原点」となる体験ができるスクールだ。定員十数人の少人数クラスで約半年間の授業を受けることができ、プロと共創しながら原石が磨かれていく。
GAKUで教壇に立つ江﨑、髙木、津川とGAKU創業者の武田は、教育によって学生が変わる瞬間を多数見てきた。今回の座談会ではそんな4人が集まり、10代に「教える」ことの意義や、クリエイティブ人材育成における課題を語った。
髙木遊(以下、髙木):まずは「なぜ教えるのか」という話から。僕の仕事であるキュレーターは、若い人の間での認知度が低いんです。若い人がキュレーションに出会える場所があまりにも少なく、国立大学でキュレーションを学べるのは東京藝術大学だけ。だったら自分でキュレーターが羽化する場所をつくりたいと思い、教える立場になりました。
江﨑文武(以下、江﨑):キュレーターとは違い、音楽は身近な存在です。でも、学校教育において、音楽で表現する喜びや楽しさはないがしろにされてきた歴史があります。明治維新のときに、音楽は西洋文化を受容する土台という位置づけで公教育に取り込まれました。150年以上たった今でもその方針は変わっていません。テクノロジーが進化し誰もが音楽をつくれる今、音楽教育を表現の教育としてやり直すべきだと強く思っています。だからこそ、自ら子どもたちにそうした環境を与えたいなと。
津川恵理(以下、津川):私は過去に東京藝術大学で教育研究助手として、今は早稲田大学をはじめとするいくつかの大学で非常勤講師としても教えているのですが、GAKUでは10代の子たちと一緒に“模索“してみたい、という思いがあります。
私は都市を題材にした「(Non)Fictional Urbanism ─ まちの観察と実験 ─」という授業をしているのですが、このテーマに決めたのも、本来は結果や目的がわかったうえでつくられる都市というものを、子どものピュアな視点で見たときにどういう発想が生まれるのかを知りたかったから。建築は受注産業ですが、最近は建築家自らが都市の可能性を模索して仕掛けられる主体的な能力が問われている。だからこそ学生たちと共創したいなと。