蛎田:実は2週間前にニューヨーク出店の話が来ていて、来週出張してきます。今日はそれをずっと言いたかった(笑)。マンハッタンのど真ん中、新宿の店と同じ300平米です。ロサンゼルスでも同時に話が進んでいて、どちらも4月に条件をまとめ、問題なければ契約締結。年内オープンに間に合うかどうかですね。こういうスピード感がある意思決定ができるようになったのも、自分自身の変化です。
北野:ニューヨークの家賃はとてつもなく高い印象がありますが、いったいペイするんですか?
蛎田:初期費用で2、3億円を最初に出して、いったん回り始めれば全然ペイします。僕は今の店でテストマーケティングが終わったし、会社経営者という土台があるので、事業計画も一瞬でつくれます。だからビジネスマンとして「絶対うまくいく」と投資家にも力説できるんです。
海外はライバルが少ないから、ちょっといいものを出せば差別化できます。豊洲から食材が届く物流もあるので心配ありません。逆に寿司のビジネスはライバルが多い日本でやるのがいちばん難しいです。
北野:採用はどのように考えていますか。
蛎田:海外で飲食を展開する場合、現地の人を雇用しなくてはいけない割合が定められています。そこでスクール事業「かきだ鮨アカデミー」の開校をグローバルで考えています。世界に寿司文化を広げつつ、いい人材も確保するのが狙いです。
北野:一石二鳥でもうかる。
蛎田:今の店では未経験者を採用して、2週間ほどで表に立って握れるような教育をしています。若い人たちを採用して、普通にビジネスパーソンとして通用する人材に育てます。一般企業で「営業をする」代わりに、「寿司を握る」のが違うだけです。
北野:将来「かきだ」が日本発の世界的ブランドになる未来が少し見えた気がします。
蛎田:世界で「Sushi」といえば、僕らのずっと上の世代の「NOBU」さんや「BENIHANA」さんがいます。最近は「Zuma」の勢いもありますが、もっと増えていいはず。日本は人口が減り、国力が落ちていくので、外貨を取りに行く必要があります。海外からのインバウンドに向けて商売するか、日本人が外に出て行かないといけません。超エリートは別ですが「少し英語が話せて営業ができます」という日本人より、よほど「寿司が握れます」と言える人のほうが求められると思うんです。
北野:寿司から未来が見えているんですね。
蛎田:海外出店が落ちついたら、1次産業化もやりたいですね。もともと釣りに打ち込んでいたので、そちらのビジネスも好きなんですよ。世界の各拠点に出口としての寿司屋をつくれれば、1次産業から物流までのリアルビジネスを牛耳れるかもしれない。
本当は転職メディアなどをぶち当てて10億ぐらいで売って人生上がりたかったけど(笑)、寿司を初めて握った日から走り続ける覚悟をしました。