政治

2024.04.16

「ウクライナはロシアの一部」がトランプの考え 元米高官が暴露

2018年7月、フィンランド・ヘルシンキでの首脳会談後の共同記者会見で握手するトランプ米大統領(当時)とロシアのプーチン大統領(Chris McGrath/Getty Images)

ドナルド・トランプ前米大統領は在任中、ウクライナは「ロシアの一部でなければならない」との考えを口にしていたと、元トランプ政権高官が近刊書に採録されたインタビューで語っていることがわかった。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのウラジーミル・プーチン大統領の考え方と通じる見解だ。米議会では、トランプ派の共和党議員らの妨害でウクライナへの追加支援法案が滞っている。

この元高官は、トランプ政権で国家安全保障会議(NSC)の欧州・ロシア担当上級部長を務めたフィオナ・ヒル。英紙ガーディアンによると、米紙ニューヨーク・タイムズのデービッド・サンガー記者の新著「New Cold Wars: China's Rise, Russia's Invasion, and America's Struggle to Defend the West(仮訳:新たな冷戦─台頭する中国、侵略するロシア、そして西側の防衛に苦慮するアメリカ)」(16日発売)で、トランプが「ウクライナ、そしてもちろんクリミアも、ロシアの一部でなければならないと考えていることを非常に明確に示していた」との発言が引用されている。

トランプが明らかにしたとされる考えはプーチンの立場と一致するものだ。プーチンは3月の演説でも、ロシアがウクライナで占領した領域は「新しいロシア」の一部だと主張した。

フォーブスは11月の米大統領選に向けて共和党の候補指名を確実にしているトランプの陣営にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。

プーチンをたびたび称賛しているトランプは、大統領に復帰すれば24時間以内にロシアとウクライナの戦争を終わらせると主張。その際、ウクライナがロシアに領土の一部を割譲することが条件となる可能性を示唆している。ウクライナ側は、そうした取引はあり得ないと繰り返し言明している。

トランプは2月、北大西洋条約機構(NATO)への防衛費拠出が不十分な加盟国に対して「ロシアにやりたいようにやるよう勧める」と発言したことを明かし、広く反発を買った。

米国のウクライナ追加支援は、下院共和党のトランプ派議員らの抵抗で停止しており、実現は見通せない。共和党のマイク・ジョンソン下院議長は支援法案への支持を表明しているものの、右派議員から圧力を受け、いまだ下院を通過させられずにいる(編集注:ロイター通信などによると、ジョンソンは14日、イスラエル支援予算案の可決を今週中にめざす意向を示したが、法案にウクライナなどへの支援分も盛り込まれるのかは明言しなかった)。

12日に発表されたギャラップの世論調査によれば、米国のウクライナ支援が過剰と考えている米国民は36%にとどまり、不十分と考えている人の割合(41%)が上回った。昨年11月の調査では過剰という回答が41%、不十分という回答が25%で、米国民の間ではウクライナへの支援拡大を求める声が強まっている。

ヒルはトランプの1回目の弾劾裁判で重要な証人になった。証言では、2016年の選挙に干渉したのはロシアではなくウクライナだったという共和党の主張の嘘を暴いたほか、トランプがウクライナ側に圧力をかけてジョー・バイデン現大統領の息子、ハンター・バイデンを捜査させようとした疑惑を裏づけた。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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