もちろん、リスクはたくさんある。為替レートを下げる操作をすれば、不動産開発業者の外国での債務支払いが厳しくなり、債務不履行のリスクが高くなるかもしれない。人民元の信用構築における進歩が無になる可能性もある。米国の共和党にも民主党にも、中国を叩く理由ができる──しかも、今年は大統領選挙の年だ。
とはいえ、円が下落すれば、習は、先例に習う以外の選択肢はほとんどないと考えるかもしれない。中国が通貨安に方向転換したら、ワシントンから東京までの当局者がパニックになるだろう。バイデン政権下のジャネット・イエレン財務長官も、厳しい立場に置かれることになる。
同盟国の日本がしているのとまったく同じことを中国がした場合、米当局はそれを批判できるだろうか? 中国の為替操作に報復措置をとりながら、日本は為替操作などしていないというふりをする。そんなことを、米財務省はいったいどうすればできるのか?
答えは、いうまでもなく、岸田政権が円高を受け入れることだ。日本政府はさらなる円安を望まないと発言するだけでは足りない。大胆かつ透明な施策により、為替レートを押し上げなければならない。そうすればおそらく、信頼感のようなものが生まれ、それがグローバル投資家の心に響くかもしれない。
バイデンが賢明であれば、岸田との首脳会談で、この問題に時間を割いたはずだ。この問題がわだかまる時間が長くなればなるほど、「日本版ペソ」に刺激された中国が、グローバル市場を引っくり返す行動をとるリスクは大きくなる。そして、2024年が先へ進むにつれて、どこのトレーダーたちも神経をとがらせることになるだろう。
(forbes.com 原文)