エール大のエトワーズによると、複雑な生態系には、エネルギーを変換して生物系に取り込む一次生産者が不可欠だ。地球の一次生産者は光合成生物のため、この先入観を超越した見方をするのは難しいと、エトワーズは指摘している。
気候を変動させる樹木
リオグランデドスル連邦大のメンドンサによると、樹木は個体としては、局所的な温度や湿度、風の流れなどを変える。また、森林として集まると、地域的な気候を変化させる可能性があるという。地球に昔から残っている広大な熱帯雨林は、地球の生物圏に非常に明確な影響を残していると、メンドンサは指摘する。また、森林は他の生命体にとっての生態学的な基盤となっている。地球では、植物やあらゆる種類の動物、菌類や細菌類が全て、樹木の樹皮、芽、幹、葉、根、花や果実に依存して生息している。
太陽系外惑星の森林は、地球の森林とどのような違いがあるだろうか。
メンドンサによれば、樹木に似た生命体が存在する系外惑星は、存在しない惑星とはまったくの別世界だろう。より静穏で、それほど風の強くない場所である一方、生命に満ちあふれている可能性が高いという。
もし植物が水と栄養を得て全身に行き渡らせるために、何らかの別のシステムを進化させたら、樹木はどのような外見になるだろうかと、エトワーズは考える。
樹木がどのように機能するかに対する多数の潜在的な生態学的制限要因により、進化が数億年かけて作り上げてきた古来の構造に戻されると、エトワーズは述べている。樹木の高さ、生産性、干ばつや寒さへの耐性などは全て、地球の植物が作り上げた維管束系に大きく左右されていると、エトワーズは説明した。
樹木は実際に、人為的な気候変動を食い止めるために重要なのだろうか。
米カリフォルニア大学リバーサイド校の惑星宇宙生物学者、ミカエラ・レオンは取材に応じた電子メールで、植物が炭酸ガスを吸収して人為的気候変動から炭素排出量を削減するという理由から、樹木は炭素吸収源として機能するという重要な役割を演じている一方、炭素循環との相互作用の規模と時間スケールという点では、岩石と惑星内部が担う役割に比べてはるかに小さいと語っている。
岩石や惑星内部による非生物的な「サーモスタット」プロセスは、樹木が出現するよりずっと以前から地球の気候を安定させていた。従って、樹木のない惑星でも、寿命のうちの長期間にわたって気候条件を維持できるかもしれないと、レオンは指摘する。