ラグジュアリーとマウンティング 程よい距離の取り方とは

Photo by Pascal Le Segretain/Getty Images

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ラグジュアリーのアカデミックな研究動向を個人的に指南してくれた人が最近、病気で亡くなりました。ミラノ工科大のビジネススクールでラグジュアリービジネスを教えていたアレッサンドロ・ブルンです。『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義』のなかでも、彼のことは紹介しています。
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きっかけは、同大学で経営学を教える友人に「ラグジュアリービジネス研究の大枠を知りたいのだけど、ブルンさんを紹介してくれないかな」と聞いたことでした。初めて会ったのが大学近くの海鮮料理のレストラン。二人で昼食をとりながら、簡単な自己紹介をし合った後、彼が最初に放った何気ない台詞が、その後のぼくのラグジュアリーへの考え方に大きな影響を与えました。

「極端な言い方をすれば、今世紀のラグジュアリー市場は米国の戦略コンサルティング企業、ベイン&カンパニーのミラノオフィスが作ったようなものだ」

「ラグジュアリー」を戦略的につくることができた。この事実に、ぼくはこの分野に抜群の面白さを感じました。
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政治や宗教の権力、新興ブルジュアなどが時代によってそれぞれにラグジュアリーを求めてきた。20世紀後半になるとラグジュアリーにビジネスチャンスがあることを、主に19世紀に創立された欧州企業の人たちに日本人が気づかせることになった。それがフランスのコングロマリットの誕生を促したあたりまでは承知していましたが、今世紀のラグジュアリーは別のところに「震源地」があったのです。

何らかの重厚な時間の積み重ねが「ラグジュアリーの必須条件」ではなかった……誰もが当事者になる契機があるフィールドだと直感に響きました。

立役者を正確に言えば、ベイン&カンパニーのミラノオフィスでラグジュアリーやファッションのチームを指揮するクラウディア・ダルピッツィオの貢献が大であると知ります。後に彼女のプレゼンを何度か聞き、また彼女の右腕、フェデリカ・ヴェラートとは直接話しをする機会を得ました。

どのようなタイプの人が今世紀のラグジュアリービジネスを推進してきたのかが分かると、どこに目的地を定めるべきかの勘がつきやすくなります。その点でもブルンの指摘は、ぼくの活動の起点になりました。

また彼は、個人レッスンとも称するラグジュアリーのオリエンテーションも施してくれました。どのような要点に注意を払うと良いのか、あるいは読むべき論文と書籍は何か。その後のぼくの活動にこうした知的な営みが貢献したのは確かながら、実は別の観点でも、ブルンが暗に教示していたことが役に立ちます。
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前半=安西洋之 後半=前澤知美

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