「ファーストペンギン」に続いて、全員が─
「ファーストペンギン」という言葉があります。ペンギンは普段陸上で集団行動しますが、その中で最初に危険を顧みず魚を求めて海に飛び込むペンギンを指す言葉です。新しい領域を切り開く人の例えとして用いられ、通常、最初にリスクを取ったものが多くのリターンを得るというストーリーで語られます。しかし、私がむしろ重要だと思うことは、そのファーストペンギンに続いて、集団全体が海に飛び込み、皆が成長していく点です。世の中には、未知なる領域に挑戦し、その勇敢な行動によって周囲の人々に影響を与える人がいます。おそらく皆さんも、今後大学の中でも、外の世界でも多くのそのような存在に出会うと思います。勇気ある他者の行動を積極的に探してください。その出会いの中であなた自身が刺激を受け成長することができるでしょう。そして、そのような機会を大切にし、自分自身も社会を一歩進める意識を持ってください。
自分の気づきや興味から踏み出した個人的な一歩を積み重ね、自分の独自性を形成する。そしてそこで見出した自らのフロンティアに挑戦を続ける。一方で個人のチャレンジ精神が周囲に良い影響を与え、勇気を得た人がまたそれぞれ独自のフロンティアを探し、新たな挑戦をする。こうしたサイクルが起これば、社会は新たな可能性に向かって前進していくのではないでしょうか。ここで大切なことは、誰かが挑んだフロンティアをただ後追いすることではなく、チャレンジ精神そのものを学び、他者と協力し合いながらも、一人ひとりが独自の一歩を踏み出すことではないかと思っています。
一人の人間にとっては小さな一歩であっても、人類にとっての大きな飛躍のきっかけになることもあります。「あなた自身」の一歩が、「社会」の一歩、そして「人類」の偉大な未来に繋がっていくのです。一歩を踏み出して挑戦を続けていってください。一緒に頑張っていきましょう。
この度は入学誠におめでとうございます。
米田あゆ◎1995年生まれ。2019年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部附属病院に入職。2021年から日本赤十字社医療センターで外科医師として勤務。2023年2月、月面における活動も視野に入れたJAXA宇宙飛行士候補者選抜で過去最多の約4千人の応募者のなかから選ばれた。同年4月JAXAに入構し、宇宙飛行士候補者基礎訓練に参加。正式に認定されれば現役最年少のJAXA宇宙飛行士となる。