ロシア軍の戦闘車両の不足を示す証拠もある。装甲のない貨物用トラックなどに乗り込んで戦闘に臨む部隊の姿だ。なかには、ゴルフカートのような中国製車両を使う部隊もある。
車体の前も横も開放されたゴルフカートじみた車両が、たとえば、ウクライナ軍の怒りをたぎらせた対戦車ミサイルチームや、最も腕のたつドローン(無人機)操縦士との戦闘で長くもたないのは、わざわざ言うまでもないだろう。ロシア軍がウクライナに30万人、40万人の人員を投入しようが、何も防護を与えなければ役に立たないのだ。
ウクライナ軍が応射すらできない場合もあるほどの弾薬不足に陥っていなければ、ロシア軍の脆さはもっとあらわになっていただろう。
ウクライナ軍による2023年の反転攻勢は、結局わずかな前進しか遂げられず、年後半に頓挫した。その後、ロシア軍が主導権を握り、戦線全体で攻勢に転じた。
これはウクライナ側にとって最悪のタイミングで起こった。ほぼ同じ時期の昨年10月中旬、米国ではジョー・バイデン大統領がウクライナ支援向けの600億ドル強を含む予算案を議会に提示したが、同月下旬に下院議長に就任したジョンソンは採決を拒んだ。
ジョンソンはドナルド・トランプ前大統領の側近だ。トランプは2019年、ウクライナ政府に政敵のバイデンと息子の汚職疑惑について捜査するよう圧力をかけた問題で弾劾訴追された。トランプは以来、ウクライナに対して領土の一部をロシアに割譲するよう促している。
ジョンソンやその背後にいるトランプによって砲弾数十万発や地対空ミサイル数千発を奪われるかたちになったウクライナ軍は、十分な火力があれば保持できていたかもしれない陣地からの撤退という厳しい選択を余儀なくされている。
ウクライナ軍の東部での防御拠点だったアウジーウカがそうだった。2000人規模の守備隊は、攻撃してくるロシア軍部隊を撃退し続け、5カ月ほどの間に数万人の損耗を被らせたが、2月中旬、弾薬が枯渇するなかでついに撤退に追い込まれた。現在、同じく東部のチャシウヤールを防御する2000人規模の守備隊も、運河地区で同様の深刻なジレンマに陥っている。