そうできたのは、ロシア政府が志願兵への報酬を増額したのに加え、2022年後半に約30万人を動員したからだ。さらに、新兵をウクライナの戦線に迅速に投入するために、ロシア軍が基礎的な訓練を短縮しているという事情もある。
しかし、こうした訓練不足の新兵は前線で長く生き残ることはできない。ウクライナ国防省の発表では、ロシア軍はこのところ1日に800〜1000人の人員を失っている。
ロシア兵はウクライナに到着するとすぐに死ぬ。エストニア国防省は昨年の研究で、ウクライナ側が今年、ロシア軍に10万人の死者・重傷者を出させれば、ロシアの動員努力を崩壊させるとまではいかなくとも、それに恒久的なダメージ与えられると分析していた。
現在、ウクライナは年30万人のペースでロシア軍の人員を損耗させている。ロシアはこれほどの人的損失には持ちこたえることができない。
車両の損害についても同様だ。ロシアの産業界による戦車の新造数は年500〜600両、その他の戦闘車両の新造数もおそらく1000両かそこらにとどまる。それに対して、ロシア軍がウクライナで失っている戦車は年1000両超、それ以外の戦闘車両の損失も2000両近くに達する。しかも、損失ペースはますます加速している。
つまり、戦闘車両の損失数と新造数には大きなギャップがある。それを埋め合わせるために、ロシアは1970年代、さらには1960年代や1950年代までさかのぼる老朽化した戦闘車両を長期保管施設から引っ張り出している。だが、こうした古い車両の在庫も無限にあるわけではない。繰り返せば、ソ連産業界の全盛期に生産されたこれらの車両を新規生産分で補うことはできない。