イスラエル国防軍のエリート集団である8200部隊がヤシャールに目をつけたのは、彼女がペルシャ語とイランの文化を理解しており、情報収集に役立つと考えたからだった。彼女は、イスラエルの諜報機関で15年、民間企業で7年を過ごした後にZafran(ザフラン)というサイバーセキュリティ企業を立ち上げ、3000万ドル(約45億円)を調達した。同社は、スパイやサイバー犯罪者が脆弱性を悪用して企業のネットワークに侵入するのを防いでいる。
ザフランのソリューションは、ハイレベルな技術を用いているがシンプルだ。同社は、顧客にとって最も差し迫った脆弱性を特定し、そのリスクを軽減するためにすでに持っているテクノロジーをどのように使うべきかを伝えている。ザフランは、顧客のネットワークをスキャンし、APIを調査することで、脆弱性を修正するための方法を探り当て、それを「技術的知識を持たない経営幹部でも理解できるように翻訳している」とヤシャールは説明する。
「これはほとんど生物学というか、自己治癒プラットフォームのようなものなのです」と、彼女は語る。
同社のプロダクトのアイデアは、ヤシャールがグーグル傘下のセキュリティ企業Mandiant(マンディアント)に勤めていた2021年に、ある病院を攻撃したランサムウェアを調査していた時に生まれたという。後に彼女の共同創業者となるベン・セリとスニール・ハヴダラらも当時、別のセキュリティ企業で同じ攻撃を調査していた。
彼らは暗号化されたファイルを復元することができなかったが、後にその病院が実際は、この攻撃を未然に防ぐためのツールを導入済みだったことを知り、愕然としたという。彼らは同じことが何度も繰り返されるのを見てきた。
「こんなことはうんざりだ。これが二度と起こらないようにしたい」とその当時、ヤシャールはセリに話したことを覚えている。そしてセリは、週末を利用して、ザフランのプロトタイプを作成した。ヤシャール、セリ、ハヴダラの3人は、2022年後半にそれぞれの勤め先を辞めて会社を立ち上げた。
セコイアの元トップが取締役に
3月28日にステルス状態から脱したザフランは、ベンチャーキャピタル(VC)界の重鎮たちから合計3000万ドル(約46億円)を調達したことを発表した。同社の取締役には、セコイア・キャピタルの元マネージングパートナーでWiz(ウィズ)やCyera(サイラ)のようなイスラエルのセキュリティ企業への投資実績をもつダグ・レオーネが名を連ねている。また、フォーブスのトップ投資家リストMidas List(ミダスリスト)に選ばれたイスラエルのVC、Cyberstarts(サイバースターツ)の創設者のギリ・ラーナンと彼のパートナーであるリオール・サイモンもザフランに出資している。さらに、バスケットボールのスーパースターのステフィン・カリーの投資会社Penny Jar(ペニー・ジャー)も同社を支援している。