民主党のホアキン・カストロ下院議員(テキサス州)から、ガザ地区の一部またはガザ北部について「飢饉はすでに起きているか」との質問を受けたパワー長官は、食料不安の深刻度を示す世界標準である「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の評価を引用し、「そうした評価がされている。その評価は信頼に足ると私たちは考えている」と述べた。
3月に発表された最新のIPC報告では、ガザ北部の飢饉は「差し迫って」おり、「2024年3月中旬~5月のいずれかの時点で発生すると予測される」と評価されていた。しかし、カストロ議員から重ねて「すでに飢饉は起きているのか」と問われると、パワー長官は「それは……その通りだ」と答えた。
パワー長官によると、昨年10月のイスラム組織ハマスによる越境攻撃を受けてイスラエル軍のガザ地区攻撃が激化する以前は、ガザの子どもたちの栄養失調率はゼロに近かった。しかし、この半年間で子どもの3人に1人が栄養失調状態となり、5歳未満の急性栄養失調率は「著しく悪化」して今年1月に16%、2月には30%へと上昇した。
パワー長官はまた、ガザ地区内の移動が容易でないため「私たちが望む規模での評価」が困難な点に留意をうながした。
ガザ地区における飢餓のリスクについては、人道支援のアクセスが確保できない中、世界中の多くの人道関係者が警鐘を鳴らしてきた。ここ数日は、ハフィントンポストがガザの栄養失調は「現代史において前例がない」とするUSAIDの公電を引用したり、ロイター通信が匿名の国務省高官の発言としてガザの飢饉はすでに進行している「可能性が非常に高い」と伝えるなど、米当局者がガザの一部での飢饉発生を非公式に懸念している様子がうかがえる報道が増えていた。
イスラエルは、ガザ入りする援助関係者の増員と食料の搬入量増加を認めるよう国際的な圧力にさらされている。国際NGOオックスファムなどの人道支援団体は、イスラエルがガザ地区への援助を意図的に妨害していると非難しており、国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルに対し、ガザへの食料援助をより適切に許可するよう暫定措置命令を出した。
イスラエルは援助の妨害を否定している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は3月、独メディア大手アクセル・シュプリンガーに「わが国の政策は、可能な限り多くの人道援助を投入することだ」と述べ、ハマスが援助物資を盗んでいると非難した。だが、パワー長官は10日の議会公聴会で、ハマスがガザに送られた食料援助を大量に盗んでいるという証拠はないと証言した。
イスラエルは国際的な圧力を受け、より多くの人道回廊の設置を約束。今週初め、戦争開始以来最も多い468台の援助トラックがガザに入ったと発表した。しかしロイターによると、国連はイスラエルの規制によりトラックの多くには積載量の半分しか荷が積まれていなかったと主張しており、実際の援助の効果には疑義が生じている。
(forbes.com 原文)