欧州

2024.04.12

ウクライナ、対艦ミサイルの弾頭転用した大型無人艇を開発か 黒海で謎のボート発見

1950年代にソ連で開発されたP-15テルミート対艦ミサイル(Shutterstock.com)

ロシア海軍の黒海艦隊に対してウクライナが激化させている海戦で、爆薬を積み衛星経由で操縦する小型水上ドローン(無人艇)は主要な兵器となっている。

ウクライナの水上ドローンはこれまでに黒海艦隊の軍艦3隻を攻撃し、おそらく撃沈した。直近では3月4日から5日にかけての夜、ロシア占領下クリミア南東部のフェオドシヤ港外でミサイルコルベット「セルゲイ・コトフ」を襲撃して沈めている

ウクライナの水上ドローンに欠点があるとすれば、弾頭がおそらく180〜230kg程度と、1艇で敵艦を沈めるには小さすぎることだ。そのため、ウクライナの水上ドローンは「群れ」として運用されていて、操縦士たちは目標とする艦艇に対して全体で繰り返し打撃を加えるという戦術を採っている。

だがウクライナは、従来の倍以上となる500kgの大型弾頭を搭載した水上ドローンの配備もめざしている可能性がある。この弾頭は、退役した旧ソ連製対艦ミサイルから取り出したものとみられている。

事実であれば、ウクライナの水上ドローン部隊は新たなクラスの兵器を手にしつつあるということになる。この大型弾頭型の無人艇は黒海艦隊の艦艇を沈めるだけでなく、クリミアとロシア本土を結ぶ戦略的に重要なケルチ橋など、鉄とコンクリートでできた橋なども破壊できるかもしれない。

ウクライナが新型無人艇を開発している可能性を示す最初の証拠は、先週、偶然見つかった。ルーマニア当局が南東部トゥズラ沖の黒海で、転覆した硬式ゴムボートを発見した。ボートはその北のコンスタンツァ港まで救難艇で曳航され、現地で3日に政府の専門家によって検分された。

ルーマニアメディアによると、ボートにはジャマー(電波妨害装置)が取り付けられていたほか、弾頭とみられる爆発物も見つかったという。少なくとも写真では、弾頭が艇首に付いたままの状態に見える。

無人艇に改造されていたらしいこのボートの所属元や、ルーマニアの海域に流れてきた経緯は不明だ。だが、非在来型の海戦に詳しい軍事アナリストのH・I・サットンは、艇体は米国製の捜索救助艇を改造したものだと特定し、同じタイプの捜索救難艇が米国からウクライナに供与されていることを指摘している。また、大きな弾頭は旧ソ連製P-20対艦ミサイル(編集注:北大西洋条約機構=NATO=のコードネームで「スティクス」とされたP-15の派生型)と特定した。P-20はウクライナ海軍がかつて運用していた。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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