サイバーセキュリティ企業Surfshark(サーフシャーク)が行った最新の調査によると、忘れられる権利の適用が始まった2015年から、新型コロナウイルスのパンデミックが発生した2020年までの間に、個人情報の削除依頼は徐々に減少したという。2020年には劇的な増加が見られたものの、現在は再び減少傾向にある。
忘れられる権利は、EUや欧州経済領域、英国、スイスなどにおいて、個人の名前に関する検索クエリから得られる結果を削除することを検索エンジンに求めるものだ。施行の初年度には16万9200件の申請があったが、その後は減少を続け、パンデミックが発生した2020年に30%増加した。
「2020年に削除依頼が増加した要因の1つは、コロナ禍だと思われる。日常生活の多くがバーチャル化したことで、人々はデジタルをより意識し、オンライン上のプライバシーを見直すようになった」と、サーフシャークのプライバシー担当者は話す。
同社の最新調査によると、2022年にグーグルとBingに提出された個人データの削除依頼件数は約15万5000件で、前年から約20%減少したという。国別の依頼件数を見ると、フランスとドイツ、英国が最も多く、全体の50%以上を占めている。人口10万人当たりの件数では、スウェーデンとフランスが7件で最も多かった一方、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、チェコ、スロバキアは1件以下だった。
「興味深いことに、欧米諸国は個人データの削除に最も積極的だが、他の欧州諸国ではGDPR(一般データ保護規則)の下で与えられたこの権利が提供するメリットに関する認識が不足しているようだ」と、サーフシャークの広報担当者のリナ・サーヴィラは指摘する。
「忘れられる権利に関する一般の理解を高めることは、世界規模でデジタル著作権保護とプライバシー強化を促進するGDPRの役割を強調することにつながる」とサーヴィラは付け加えた。
削除依頼が最も多いのはフェイスブック
個人データの削除依頼が最も多かったのはSNSで、中でもフェイスブックには12万9000件のURL削除要請があった。X(旧ツイッター)には7万2000件、YouTubeには5万3000件、グーグルには3万件のURL削除要請があった。Xとグーグルはその約半数を、YouTubeは約3分の1を削除している。2022年末までに機密性の高い情報やその他の個人情報のURL削除率が最も高かったのはグーグルで、それぞれ97%と93%が削除された。その一方で、犯罪情報の削除率は61%にとどまった。
また、職業上の不正行為やその他の職業情報に関連するURLの削除率は50%未満だった。削除率が最も低かったのは政治に関する情報で、グーグルが削除した全URLに占める割合は、わずか5分の1だった。
グーグルは最近、パブリッシャーに対して検索結果からコンテンツを削除したことを通知するのを止めた。これは、スウェーデンの裁判所が、この行為自体が忘れられる権利を要求する人のプライバシーを侵害するとの判決を下したためだ。グーグルは不服を申し立てたが、棄却されている。
(forbes.com 原文)