興味深いことに、どんな分野であれ頂点を極めた人はおそらく、クライバーンと同じことを言うだろう。例えば、プロゴルファーのタイガー・ウッズはパットの練習をするとき、約180cmの距離から連続50回、成功するまでやめないのは有名な話だ。
ここで肝心なのは、ウッズが自らに、50回のパットを、一度も外さずに決めなければならないというルールを課していたことだ。たとえ49回連続で成功させても、50回目で失敗したら、最初からやり直すわけだ。
自らの職業として選んだ分野で、人並外れた業績を目指す人は、絶対に近道しない──そのことを思い出させてくれる人は、ウッズとクライバーの2人に限らず、無数にいる。彼らは、上達を目指して絶えず努力する。
米アラバマ大学アメリカンフットボール部を長年率いた偉大なヘッドコーチのニック・セイバンは、かつてこう語った。「人生には2種類の苦痛がある。自己規律の苦痛と、失望の苦痛だ。前者に対処できるのであれば、後者に対処できないことは決してないだろう」
これは、心にとめておくべき発言だ。なぜなら、AI(人工知能)の能力のおかげで、私たち人間は、ある種の行動や学習が不要となり、それらから解放されつつある。そして、AIを批判する人々は、AIによるそうした影響から教育を守ろうとして、防止策を求めているからだ。そうした動きに伴って、ChatGPTなどを使って論文を書いて提出する学生を「捕捉する」ソフトウェアも開発されつつある。
なかには、完全に諦めた人もいる。弁護士でエンジニアでもあるウィルソン・ツーが、2024年4月はじめに『The Hill』に寄稿した文章を例にとろう。
「AIは高等教育を破壊している」とツーは断言する。なぜなら、「圧倒的多数の学生」が、「これまでに考案されたなかで、最も安価かつ簡単に手抜きができる方法」を利用しているからだという。