香港アパレル大手エスプリ、事業再生を目指し投資会社と交渉中

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かつて急成長を遂げた香港のファッション大手エスプリ・ホールディングス(思捷環球控股)は米国時間4月9日、苦境に陥った欧州事業の立て直しに向けて名称非公開の国際的なプライベートエクイティ(PE)大手と交渉中だと発表した。これを受け、同社の株価は、ここ2日間で150%急騰した。

エスプリは、香港証券取引所に提出した書類で、そのPEファンドが同社の欧州事業の経営権を取得し、再建と再生を支援する計画に興味を示していると述べた。同ファンドは、エスプリへの出資にも興味があるとされる。

この発表は、エスプリのベルギー子会社が欧州の裁判所に破産手続きを申請したと発表した2日後に行われた。同社は、ベルギー法人の破産が、エネルギーコストや物流コストの高騰、消費者心理の悪化、高額な賃料のせいだと述べ、事業閉鎖は避けられないと付け加えた。同社のスイスの子会社も3月に破産を申請していた。

1990年代に流行の先端を行くアパレル企業だったエスプリの損失は積みあがる一方だった。同社の2023年の純損失は、前年の8億8200万香港ドル(約172億円)から23億香港ドル(約443億円)に拡大。欧州の小売・卸売事業が60%以上を占めるエスプリの売上高は、前年比16%減の59億香港ドル(約1151億円)に減少している。

1968年にサンフランシスコで設立されたエスプリは、1989年に香港の実業家マイケル・インが創業者から会社を買収した後に軌道に乗り始めた。インのリーダーシップの下で同社は欧州や米国、アジアに拠点を持つグローバルなファッションブランドへと成長。1993年に香港証券取引所に上場し、ピーク時の2007年の時価総額は1610億香港ドル(約3.1兆円)に達した。エスプリの成功により、インは2004年にビリオネアの地位を獲得した。

しかし、2008年の世界金融危機が同社のビジネスに打撃を与え、それ以来、ZARAやH&Mのようなファストファッションブランドとの競争が激化する中、同社は成功者としての地位をを取り戻すのに苦闘している。インは2006年に同社の会長を退いた後、エスプリ株の大半を売却した。フォーブスは、彼の現在の保有資産を22億ドル(約3365億円)と試算している。

過去10年間、エスプリは北米やオーストラリア、アジア、ヨーロッパの一部の市場からの撤退を余儀なくされた。現在の株価は2007年のピーク時の111.8香港ドルから99.7%下落している。同社は現在、CEOのウィリアム・パックとその妻で会長を務めるクリスティン・チウらが率いている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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