裁判所は、フリードマンとアベンがロシアのウラジーミル・プーチン大統領やその他の政府高官らと結び付いていることを示す証拠はあるものの、これらの関係から「利益を得た」かについては証拠が不十分だと判断した。
同裁判所は、フリードマンとアベンを2022年2月~23年3月のEUの制裁対象リストから除外するよう命じた。だが、EUは先月、制裁を6カ月間延長する決定を下したため、両者は依然制裁下にある。
ロシア国営タス通信は、同国大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官がこの判決を歓迎し、ロシア政府は、欧米の制裁はすべて「違法で不公平であり、破壊的」だと見なしていると述べたと伝えた。
一方、2月に獄中で死亡したロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイの側近レオニード・ボルコフは、フリードマンもアベンもこれまで「一度も公の場で戦争に反対する発言をしておらず、プーチンと対立したこともない」と指摘。EUの裁判所は「すべてお膳立てされた状態で、単に両者の望みを叶えただけだ」と批判した。
フリードマンとアベンは、先月EUが承認した制裁措置の延長を不服として上訴した。英ロイター通信が引用した裁判所の広報官によると、審理には数カ月かかるものとみられる。
フォーブスは、ロシア最大の非国営銀行アリファ銀行を設立したフリードマンの資産価値を131億ドル(約2兆円)と見積もっている。アリファ銀行を共同で所有するアベンは、43億ドル(約6600億円)相当の資産を保有している。
西側諸国は2022年のウクライナ侵攻開始以降、プーチン大統領やロシア政府と結び付いているとして、同国の複数の実業家や新興財閥オリガルヒに厳しい制裁を科している。フリードマンとアベンはEUのほか、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国、英国から制裁を受けており、これらの国では許可がない限り、資産の売却や譲渡を禁じられている。
ウクライナ出身のフリードマンは、ロシアによる軍事侵攻を「悲劇」と表現し、「戦争は決して答えにはなり得ない」と非難した。他方で、プーチン大統領を直接批判はしていない。
公認マネーロンダリング防止専門家協会(ACAMS)のジョージ・ボロシンは米紙ウォールストリートジャーナルの取材で、制裁はプーチン大統領に直接結び付くわけではなく、象徴的なものに過ぎないため、政策の観点から見ればあまり効果的ではないとの見解を示した。また、制裁は実業家を刺激し、ロシア政府に対する支援を強めるだけだと指摘する専門家もいる。
(forbes.com 原文)