欧州

2024.04.14 08:00

小売店での万引きや暴力が急増する英国が罰則強化、罰金は無制限

Shutterstock.com

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英国で小売店の店員への暴力事件が全国的に多発するなか、政府はそうした行為に対する罰則を強化する法律を制定しようとしている。

米国と同様、英国でも小売店での万引きや暴力行為の問題が深刻化している。業界団体である英小売協会は今年初めに出した報告書で、店員への暴力や暴言・脅迫などの事件が2023年に前年比で50%増加したことを明らかにした。

英政府はこれまで新しい法律は不要で導入しても効果はないと罰則の強化に消極的だったが、リシ・スナク首相は方針を一転させ、店員は犯罪や暴言・脅迫の脅威から守られるべきとの考えを示した。

これを受けて政府の対応措置の一環として、イングランドとウェールズで店員への暴力が刑事犯罪とされることになった。スコットランドでは2021年に店員への暴力や暴言・脅迫は犯罪となっている。

スナク首相は新しい法律について、小売店で盗みを働く、あるいは店員に暴言を吐いたり脅迫したりする犯罪者に「もうたくさん」という「メッセージを送る」ことを意図していると説明した。

新法ではこうした犯罪に最高で拘禁刑6カ月と罰金(無制限)を科し、犯罪を犯した店舗への出入りを禁止する可能性もある。常習犯には行動追跡のためのタグ着用の義務づけもあり得る。犯罪者を特定するための顔認証には6000万ドル(約90億円)超を充てるという。

犯人の特定と万引きの抑止を目的に専用の顔認証装置が繁華街に設置される予定で、警察はこれまで以上に防犯・監視カメラの画像をデータベースと照合するよう指示されている。

深刻なケースでは、重大な傷害罪で有罪となった者は実刑判決を受けることになるが、新しい法律で有罪判決を受けた者が必ず刑務所に入るということはない。12カ月以下の拘禁刑は執行猶予となり、社会貢献活動を行う。だが例外的に実刑判決が下されることもある。

被害額、対策費用も増加

全米小売業協会も店舗での犯罪増加に苦慮しており、小売大手のターゲットは万引きなどの増加を理由に9店舗を閉鎖した。

英小売協会によると、英国内の小売店での昨年の犯罪件数は1日あたり推定1300件超で、前年は870件だった。

小売企業は昨年、防犯・監視カメラやボディカメラ、警備員の増員などの対策に15億ドル(約2290億円)以上を費やし、前年の9億1700万ドル(約1400億円)から大幅に増えた。また、万引きの被害額も前年の12億ドル(約1830億円)超から23億ドル(約3510億円)へとほぼ倍増し、被害総額は42億ドル(約6410億円)に達した。

英小売協会のヘレン・ディキンソンCEOは「店員への暴力を犯罪とみなすよう根気強く運動を続けた結果、小売店で働く300万人の声がようやく届いたと感じる。小売企業は昨年、犯罪防止対策に多額を費やし、できることに取り組んでいる。政府は行動を起こした。警察が新しい法律の下で取り締まりを強化することが不可欠だ」と述べた。

だが英慈善団体のトランスフォーム・ジャスティスは、法律の制定で店員への暴力が減る可能性は低いとみている。その理由として、救急隊員への暴力を罰する法律が施行されても暴力が減っていないことを挙げる。

また、スコットランドでは店員への暴力や暴言・脅迫はすでに犯罪とされているにもかかわらず、小売企業は依然として店舗で犯罪が急増しており、店員が脅威にさらされていると報告している。

店員への暴力を犯罪とする刑事司法案は現在、議会で審議されている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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