韓国で生きたペットの代わりに「石」を愛玩する若者たちが増加している

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韓国では、少子化問題が深刻になっており、韓国統計庁が発表した合計特殊出生率は、昨年の0.72人から今年は0.68人に落ち込むと言われている。

若者は結婚や出産をしたがらず、代わりに「ペット産業」が盛んになっていることは以前このコラムでも伝えた。

「ペット」とは、愛玩を目的として飼育される動物を指す。代表的なのは犬や猫であるが、爬虫類や大型の動物、または虫や植物もペットにしている。ところがいまでは、愛玩を目的として飼育するのが必ずしも動物ではなくなっている。
さらに、単なる愛玩を超えて、人間の生活のなかで精神的に感情を共有するという意味で、「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」、または「伴侶植物」という単語も生まれている。

以前の韓国では生涯の伴侶として、男女が結婚をしたわけだが、最近では伴侶は必ずしも人ではなくなっているのだ。また、このところ「バンリョドル(伴侶ドル)」「エワンドル(愛玩ドル)」も流行りだしているという。

石を眺めることで精神の安定

「バンリョドル」という造語をラジオで初めて耳にしたときは、一瞬「アイドル」の一種かと思った。しかし、話をよくよく聴いてみると、何と「バンリョドル」というのは、「伴侶石」のことだった。

つまり、「石ころを飼う」のが最近の流行だと言うのだ。ペットは「生物を飼う」イメージからついに「無生物を飼う」というところまできてしまっているらしい。

果たして「石」を「飼う」ことはできるのか? イメージがなかなかわいてこない。

伴侶石は「石集め」や「水石」とは違うらしい。きれいな石や珍しい石を集める人や、水石のように自然の縮小美を眺めて楽しむ趣味はいままでもあった。しかし、伴侶石とは、無生物の石を生物のように扱い、飼うことだという。つまり、石を置いているだけでなく、洗ってあげたり、着飾ってあげたり、人間の自分と生活を共にするものなのだ。

生き物を飼う場合は、世話をするだけでなく、責任も伴う。例えば、犬の場合は散歩をさせるときに、他の人を噛んだり、吠えたりしないように口に枷をかぶせたり、また排泄物の処理もする。規則的に餌も与え、病院に連れていくなど、子どもを育てるに近い労力が必要になる。

猫は手がかからないというが、それでも餌を与えるだけでなく、何かしら世話をしなければならない。しかし、石には一切そのような面倒なことがない。そして、このように石を眺めていると心が癒され、情緒的に安定するのだという。
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文=アン・ヨンヒ

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