欧州

2024.04.11 09:30

ドローン対策の究極版? 甲羅のように身を覆った「亀戦車」がロシア軍に出現

ロシア軍とウクライナ軍は、余っている手元の車台や兵器を組み合わせて新たな車両も生み出している。これもまた、戦場の状況からやむにやまれずあり合わせのもので対応したのが始まりだったが、いまでは当たり前にように行われている。

こうしたDIY車両で最も有名なものは、ウクライナ軍の領土防衛部隊が自作している通称「MT-LB-12」対戦車自走砲かもしれない。これは、古いMT-LB装甲牽引車の上にMT-12対戦車砲を溶接したものだ。

英国の兵器史家マシュー・モスは、ウクライナ側はなぜたんにMT-LBにMT-12を引かせるのではなく、わざわざ一体化した車両にしたのだろうかと問うている。「最もありそうな答えは、迅速に攻撃できるから、というものかもしれない。MT-12を牽引するMT-LBは理論上、砲(MT-12)が戦闘を開始するまでに2分弱かかるのに対して、この即席の対戦車自走砲はより素早く戦闘に入ったり、戦闘から引き揚げたりできる」


要するにロシア版フライング・エレファントについても、設計面をあれこれ詮索してもたいしたものは出てこない。詮索すべきなのはむしろ、こう改造したロシア軍の目的だ。

ロシアがウクライナで拡大した戦争が3年目に入るなか、ウクライナはFPVドローンを月に10万機以上生産するようになっている。他方、ロシアは戦車の損害がこれまでに3000両近くに達する。こうした状況で、ロシア軍の戦車兵は文字どおり生存のかかった選択に直面している。ドローンが大きな脅威になっている戦場の環境に適応するか、それをやらずに死ぬかだ。

「戦場で動くものはすべてドローンに見られ、攻撃される」。米国のシンクタンクCNAの顧問で、ロシアの軍事技術の専門家であるサミュエル・ベンデットはそう指摘している。

ロシア兵はただ死を待つのではなく、適応を図っている。ロシア版フライング・エレファントのルーフ装甲は粗雑なものだが、来たるべき機械化戦の時代を指し示している。すべての戦車でドローン対策の追加装甲が必須になる時代だ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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