──種子に向き合い続けるなかで、ご自身に何か変化はありましたか?
人参の種子を撮った時に発見してしまったのです。種子の美しさを。それまでは、法的な側面で種子に興味を抱いていましたが、色、形、種類によって異なる多様な美しさを知り、それを追求することへ関心が移りました。私は科学者ではなく写真家です。自然の美しさを魅せること、写真を撮ることも、自然を守るための一つの方法ではないのかと考えています。
旅をしながら抱く普遍的で本質的なテーマ
──今回のKYOROGRAPHIEのテーマ「SOURCE(起源、源)」について、どのように捉えましたか?「SOURCE(起源、源)」は、私のコンセプトそのものです。種子は人間のものになる前から存在し、人々は石器時代から種子を集めてビタミンやタンパク質を摂取して生きてきました。まさに、私たちの起源です。
種子は普遍的で本質的。それに、国境を超えて旅するものでもあります。一方で、例えば、アジアではお米、地中海では小麦、アメリカではトウモロコシなど分布は地域ごとに異なり、その土地固有の文化を表すものとも言えます。フランス語では「Origine(起源、由来)」とも言いますが、種子とは源であり、私たち自身のルーツそのものです。
私の作品テーマである「SEED(種子)」と完璧に重なるので、満を持してこの時を迎えたと思いました。
──実際に、どのような展示になるのでしょうか?
今回は初の試みとして、フランスの種子だけでなく京都の種子を使った作品も展示します。今年1月に京都の農家で採れた種子をフランスに送っていただき、そこから選定し、撮影しました。大根、紫蘇、お米、藍などの種子です。
二条城での展示は、緒方氏が演出してくださいます。あまり話してしまうとネタバレになってしまいますが……少しだけ。展示は、本物の小さな種子から始まり、部屋を進むにつれて何十倍にも拡大した種子の写真が現れます。私の撮影体験に基づいて、来場者にも私と同じ感覚を味わってもらうような構成です。種子の偉大な旅を、皆さんと共有できるのが楽しみです。
ティエリー・アルドゥアン(Thierry Ardouin)◎1961年、フランスのサン=トゥアン生まれの写真家。1991年に写真家集団Tendance Floueを共同設立。人間とその環境とのつながりをテーマに活動している。2022年には、著書『Seed Stories』(アトリエEXB)を出版。
KYOTGRAPHIE 京都国際写真祭
ティエリー・アルドゥアン「Seed Stories|種子は語る」
Presented by Van Cleef & Arpels In collaboration with Atelier EXB
会場:二条城 二の丸御殿 台所・御清所(京都市中京区二条城町541)
会期:4月13日〜5月12日 9:30-17:00(最終入場16:30) *二条城への入城は16:00まで
料金:大人 1200円/学生 1000円 *別途二条城への入城料(800円)が必要