第2回「KYOTOGRAPHIE」(2014年)で『火星—未知なる地表』の展示を行なったアートディレクターで写真編集者のグザヴィエ・バラル氏とご縁があり、このオファーを受けることになりました。
彼との出会いは2015年。それ以前にも、私はフランス国内では種子をポートレートにした展示を数多く行なっていましたが、『Seed Stories』を出版できたのはその出会いがきっかけです。私も周りの人たちもずっと待ち望んでいた書籍化でした。
──では、セノグラファーを務められる緒方慎一郎氏との出会いは?
緒方氏とも、バラル氏を通じてつながりました。2023年11月からこのプロジェクトについて話を進めていて、3、4回ZOOMで対話してきましたが、実は、直接お会いしたのは昨日(今年3月下旬)が初めてでした。
緒方氏については、彼が4年前にプロデュースしたパリの空間「OGATA Paris」の存在を知っていましたし、お互いにプロフェッショナルとして、近い場所にいたのではないかと思います。
秘められた多様性と自然の美しさ
──種子を撮影され続けていますが、そのきっかけはなんでしたか?もともとは、政治的な観点で種子に興味を持ったことが始まりで、2009年からその探求がはじまりました。フランスの農家では、自家保存した種子からの栽培を禁じられており、公式カタログに載っている交配種を毎年買わなければなりません。一方で、非公式な農家では公式カタログに載っていない種子を使用していました。
法的に認められている種子と、違法な種子の2種類がある。では、人参の種子はどのように分類されるのかと疑問に思ったのですが、種子というのは本当に小さいため、手に乗せて見たところで肉眼ではわかりません。そこで、写真に撮ってみたのが始まりです。顕微鏡が搭載されたオリンパスのカメラを使っていて、人参だと約30倍、インゲン豆だと15倍、バニラだと60倍などで撮影しています。