しかもこの腕時計は、極めて薄いケースの中でムーブメント(内部機械)がきちんと作動するだけでなく、ほとんどの標準的な機械式腕時計よりも正確に時を刻む。新型の「オクト フィニッシモ ウルトラ COSC」はこれまで製造された最も薄い機械式腕時計というだけでなく、世界で最も薄いCOSCクロノメーターでもあるのだ。
これはつまり、平均日差マイナス4からプラス6秒以内という精度を含む、厳しいスイス公認クロノメーター検定協会(C.O.S.C.)の認定を取得した腕時計であるということだ。ムーブメントを小型化するほど不安定になるおそれが強まることを考えれば、これは偉業である。その秘訣は、素材と構造にある。
ケースバック(裏蓋)はメインプレート(地板)の役割も果たしており、その上に170個の部品で組み上げられた手巻きキャリバー「BVL180」ムーブメントが載っている。文字盤はなく、サファイアクリスタルの風防(表のガラス)を通してこの超薄型ムーブメントが見える。ケースバック/メインプレートは高密度で硬く耐久性が非常に高いタングステンカーバイド製。従来の製品からさらに10分の1ミリメートルを削るためには、サファイアクリスタルを最適化してケースをさらに薄く作り直したことも寄与している。大きな香箱と、時針と分針のサブダイヤルがベゼル(枠)の部分に突き出しているため、そのぶんこのサファイアクリスタルはわずかに広がっている。
巻き上げと時刻合わせは手で行うが、新たな方法も用意されている。デジタルディスプレイが装備された専用ケースにこの腕時計を入れ、希望の時刻をプログラムしてボタンを押せば、自動で調整と巻き上げが行われる。
オクト フィニッシモ ウルトラには2つのバージョンがあり、1つはチタン製ケースとブレスレットにグレーのサブダイヤル、もう1つはプラチナ製ケースとブレスレットにブルーのサブダイヤルの組み合わせで、こちらは厚さが1.80mm。どちらもメインプレートはタングステンカーバイド製だ。両バージョンとも世界限定20本のみが販売される。日本ではチタン製バージョンの価格(予定)が8428万2000円、プラチナ・バージョンの「オクト フィニッシモ ウルトラ プラチナム」が8709万8000円と発表されており、2024年9月に発売予定だ。
ブルガリは3種類の新しい「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」も発表した。こちらは複雑機構のトゥールビヨンを内蔵した世界最薄の腕時計である。そのうち2つは手巻き式で、径40mm×厚さ4.85mmというサイズのケースは、ローズゴールドまたはPVDコーティングを施したチタンとなっている。3つめは自動巻トゥールビヨンをプラチナ製ケースに収めたモデルで、こちらはやや大きく径42mm×厚さ4.95mmとなる。
これら超薄型の腕時計は、エレガンス(腕時計はスリムであればあるほど、シャツの袖下に収まるドレスウォッチとして相応しく、そんな時計は常に「エレガント」と形容される)と、スチームパンク様式の建造物を1次元に縮小したようなハイテクな見た目が、奇妙なコントラストを成している。いずれにせよ、ブルガリは超薄型腕時計製造の分野において類を見ない独特の形相を作り上げた。
(forbes.com 原文)