食&酒

2024.04.12 11:45

17の地域の料理を知ることができる「池袋『ガチ中華』街歩きツアー」

稲垣 伸寿

多文化社会が生み出したグルメのジャンル

「池袋『ガチ中華』街歩きツアー」はけっこう盛りだくさんな内容で、中国の地図とある程度の現地事情が頭に入っていないとすべてを理解するのは難しいかもしれない。とにかくその店でどんな料理が食べられるのか、それだけは伝えようと、写真を用意して説明している。

すべての店で飲食もしないのにぞろぞろと入店することもできないので、店前での説明となるが、2カ所あるフードコートには実際に入ることにしている。1つは筆者が「池袋ディープチャイナのゲートウェイ」と呼んでいる「友誼食府」 である。そこには食材店が隣接しているので、珍しい中華ドリンクや軽食などを購入して、食べ歩きを楽しんでもらえる。

2019年冬にオープンした中華フードコート「友誼食府」は四川、東北、上海、雲南、台湾などの地方料理が入店している

2019年冬にオープンした中華フードコート「友誼食府」は四川、東北、上海、雲南、台湾などの地方料理が入店している

もう1つが「沸騰小吃城」だ。ここは店内が広いので、30分ほど中国茶やスイーツをいただきながら、主な地方料理の説明に加え、「池袋はいかにして『ガチ中華』の街となったか」という話をすることにしている。この店での注文はQRコード式なので、参加者には各々好きなスイーツを選んでもらっている。

もう1つの中華フードコート「沸騰小吃城」ではお茶タイム

もう1つの中華フードコート「沸騰小吃城」ではお茶タイム

ツアーに参加した人たちからは「自分が知っていた池袋とは違う、街の見え方が大きく変わった」「これまで1人では入る勇気がなかったが、友達を誘ってガチ中華の店で食事を楽しめるようになった」という声をいただいている。

このツアーを取材していただいたフードカルチャー誌の女性ライターはこう話してくれた。

「1人だと歩くことを敬遠してしまう街並みも、こうして一緒にめぐれば怖くない。以前は中華食材店の前を通っても、何を買おうかとモジモジしているだけだったが、今度はちまきを購入してみようと思った」

そして、次のような感想も聞いた。

「サイバーで近未来的な雰囲気の中国系カラオケ店やバーの看板も目立った。看板を見ながら、ここはどの地域の料理を提供する店なのか、どんなオーナーが経営しているのかなどの解説を聞いていると、いままで素通りしていた場所が一気に自分のテリトリーになった気分になった。

こうして『ガチ中華』の世界を少し知るだけでも、入店のハードルが下がる感覚があり、今度ランチで行ってみようと、Googleマップにブックマークする手が止まりませんでした」

実は、筆者はこのツアーに合わせて、2月に『東京ディープチャイナ「ガチ中華」セレクションin池袋』(ライフエスコート)という電子書籍も出している。池袋にある「ガチ中華」の店の案内書で、筆者や東京ディープチャイナ研究会(TDC)のメンバーが実際に訪ねて食事をした個性的な店を選んで紹介している。

同書の特徴は「ガチ中華」の店で提供される料理だけでなく、オーナーや調理人、スタッフの人たちの顔ぶれまで紹介していることだ。

筆者は「ガチ中華」のことを、いま日本で進行している多文化社会が生み出した新しいグルメの1ジャンルだと考えている。だから、その世界を楽しみ、理解を深めていくには、彼らの存在を知ることは欠かせないと思っている。

文=中村正人、写真=東京ディープチャイナ研究会

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