北米

2024.04.09 11:00

JPモルガンCEO、米経済の軟着陸シナリオに警鐘 金利8%の可能性も

lev radin / Shutterstock.com

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米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、インフレ対策としてとられた前例のない金融政策の効果が定着し、金利が8%にまで上昇するという、米経済にとって厳しいシナリオはまだ大いにあり得るとみている。
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ダイモンはJPモルガンの株主に宛てた4月8日付の年次書簡の中で、米経済がソフトランディング(軟着陸)する確率は70〜80%というコンセンサスよりも「かなり低い」との見方を示した。

景気後退とインフレが同時進行するスタグフレーションの懸念と併せて、ダイモンは金利が「8%あるいはそれ以上」にまで上がる可能性があると警告。すでに22年ぶりの高水準である5%超の金利をはるかに上回る数字であり、利下げが迫っているという一般的な見方と相容れないものだ(米国の金利が前回8%を超えたのは1990年)。

世界の軍事衝突の増加や、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)で世界中の中央銀行がとった積極的な政策の持続的な効果を含め、物価をしつこく上昇させる可能性のある「持続的なインフレ圧力」がいくつかあるとダイモンは説明した。
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また、高水準の金利のシナリオが現実のものとなった場合、株式投資家と債券投資家に壊滅的な影響を及ぼす可能性についても警鐘を鳴らし、株式のバリュエーションはすでに「上限」に達しており、信用状況は「極めて厳しい」と指摘した。

ダイモンの警告は、投資家が楽観視している中でのものだ。市場は利下げを待ち望み、主要株価指数は史上最高値を更新している。JPモルガンは米銀行の中で運用資産と時価総額で最大手であり、昨年末時点の国内資産は約2兆7000億ドル(約410兆円)。フォーブスの最新の推計では、ダイモンの資産は約22億ドル(約3340億円)で、その大半はJPモルガン株だ。

JPモルガンは破綻した地方銀行ファースト・リパブリック・バンク(FRC)を昨年5月に買収したこともあって、巨額の預金残高を昨年さらに6%増やした。FRC買収についてダイモンは「自分たちだけのため」ではなく、米国の銀行システム全体を安定させるための決断だったと書簡で述べた。

多岐にわたる58ページにおよぶ書簡の論調は、懸念すべきことばかりというものではない。ダイモンはいくつか前向きな見方も示し、そのうちの1つとして人工知能(AI)が社会に与える潜在的な影響を挙げ、電気や印刷機、蒸気機関になぞらえた。

ダイモンは書簡で、JPモルガンのDEI(多様性、公平性、包括性)の取り組みについて誇らしげに報告した。これはDEIが他の富豪や影響力の大きな人の間で難しい問題であることを示している。そしてダイモンはこう書いた。「告白したいことがある。私は全力投球で勇ましく、愛国的に取り組む、(適切に規制された)自由企業かつ自由市場の資本家だ」

JPモルガンは12日に第1四半期決算を発表する。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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