密輸される携帯電話の大半は、シャオミ、オッポ、リアルミーなどの中国製品で、主にパラグアイ経由でブラジルに持ち込まれる。これらの製品は低価格で、いわゆる「グレーマーケット」の主役となっている。
ABINEEによると、ブラジルのグレーマーケットで販売された端末の割合は、2023年第1四半期には全体の9%に過ぎなかったが、第4四半期には25%に拡大しており、かつてない規模で増加しているという。この数字は国内のスマートフォン市場全体の10%に相当し、620万台の端末が不正な手段で販売されたことになる。
ABINEEのウンベルト・バルバト会長は、こうした行為は容認できない規模になりつつあり、歯止めをかけるためには政府による積極的な介入が必要だと訴えた。
同団体は、密輸された機器は安全性や動作確認の試験を受けておらず、国家電気通信庁(ANATEL)の認証がないため、メーカーの保証やサービスの対象にはならないとして、消費者に注意を促している。密輸された携帯電話の主な販売経路であるマーケットプレイス(訳注:売り手と買い手が自由に参加できるインターネット上の取引市場)が公開する情報に消費者は惑わされやすいため、こうした問題による損害はすべて消費者が被ることになる。
携帯電話がパラグアイからブラジルに密輸される過程で検査が行われ、押収に至ることもあるが、ABINEEは、これでは不十分であり、マーケットプレイスを厳しく取り締まらない限り、不正な行為を抑制することはできないと指摘する。マーケットプレイス運営企業の中には、違法機器の販売を阻止する海賊版対策を施していることもあるが、ABINEEによると、ブラジルで最大の規模を誇る電子商取引(EC)大手のメルカドリブレとアマゾンとはまだ正式な合意に至っていないという。
同団体は、ブラジルは今年、脱税により40億レアル(約1200億円)の損失を被り、約4億レアル(約120億円)相当の研究開発投資を失うと試算。さらに、直接・間接雇用を合わせると1万人分の雇用が影響を受けるとして、スマートフォンの密輸は経済に多大な損害をもたらすと警告した。ABINEEのバルバト会長は、税金を払わずに国内に商品を持ち込むことは、国境だけにとどまらず国内全域に及ぶ問題であり、組織犯罪や汚職、暴力を助長する不法行為だと非難した。
(forbes.com 原文)