これらのワンコは一見、特定の「音」と特定の「結果」を関連づけることを覚えたように思えるかもしれない。たとえば「おすわり」というのは、それに従えば「ごほうびをもらえる」ということなのだ、というふうに。しかし、言葉を行動のたんなるきっかけとするこのような見方は、犬による人間の言葉の処理の、文字どおり皮相的な理解にすぎなかったのかもしれない。
米科学誌「カレント・バイオロジー」に最近発表された研究によれば、すべての犬は聞いた言葉から心にイメージを思い浮かべることができるらしい。つまり、犬は実のところ基本的に人間と変わらない仕方で、一般に思われているよりも深い言語理解をしているようなのだ。
犬も言葉から特定のイメージを思い浮かべている
人間による言葉の理解では、「N400」と呼ばれる反応が非常に重要な役割を果たしている。これは、人が何かを読んだり聞いたりしている途中で、文脈から予想されるものとそぐわないものに出くわした際、およそ400ミリ秒後に脳内に起こる反応だ。たとえば、猫が「靴」で遊んでいるという文章を読んでいるときに、唐突に「リンゴ」という単語が出てきた場合、この反応が起こるかもしれない。N400は、脳が言葉と概念の意味づけや関連性をどう処理しているかを示していて、人間による意味処理のマーカーとして広く受け入れられている。
今回の研究のおもしろい点は、人間では多くの蓄積があるN400のアプローチを犬に応用したことだ。研究チームは、文脈に合った物と文脈に合わない物が示された場合、犬の脳の反応にどのような違いがみられるかを調べた。
すると、人間のN400反応に似た反応を犬でも観察できた。犬は特定の物とのつながりが予想される単語を聞いたあと、別の物を目にすると、脳が特異な反応を示していた。これは、その犬が聞いた単語に基づいて、それに合った物を思い浮かべていたことを意味する。