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事業継承

2024.04.22 12:00

組織変革から地域共創型まで。新しい事業承継100社(後編)

イラストレーション=ブラチスラフ・ミレンコビッチ/シナジー・アート

企業を取り巻く環境が激しく変化するなか、未来へとビジネスをつなぐ事業承継のあり方も多様化している。各企業が直面する経営課題に後継者たちはどんなアプローチで向き合っているのか。親族内承継だけでなく、増えつつあるM&Aやサーチファンドによる第三者承継などの事例も紹介する。

中小企業を中心に100社の事業承継の事例を「家業の宝を生かす」「承継方法を学ぶ」「承継後に急成長」「組織を変える」「地域とともにつくる」「レガシー産業を変える」の6つのカテゴリーに分類。さらに、多様な承継のあり方や、承継後のビジネスの変化を示すタグを各企業名の右に記載した。

選定にあたっては、有識者や自治体などにアンケートを実施し、本企画の監修をした入山章栄教授から助言をもらい、編集部で決めた。

(前編はこちら


CATEGORY 02|承継方法を学ぶ(続き)

漆琳堂 伝統|ブランディング

代表者|内田 徹 設立年|1988年
伝統的工芸品、越前漆器を製造。8代目当主である徹氏は大学卒業後から技術継承に努め、産地最年少で越前漆器伝統工芸士に認定される。2019年に代表就任。色彩豊かな漆器ブランド「aisomo cosomo」や、食洗機対応の「RIN&CO.」など、伝統漆器に現代のライフスタイルに寄り添う新ブランドを展開し、伝統産業に新たな活路を見出す。

農口尚彦研究所 伝統|技術承継

代表者|朝野勇次郎 設立年|2017年
70年以上酒づくりを続ける伝説の杜氏、農口尚彦氏のもとで若い蔵人たちが学ぶ。野口氏は全国新酒鑑評会で通算27回の金賞を受賞した「現代の名工」。23年には、吟醸づくりで卓越した技能を示し、90歳を超えたいまも後継者育成に尽力しているとして、文化庁長官表彰を受けた。現役引退をしていた野口氏の酒づくりを伝承しようと復活させた。

一平ホールディングス 家業|地域一体型 多角化

代表者|村岡浩司 設立年|2019年
「レタス巻き」で有名だった宮崎県「一平寿し」の2代目が、04年の家業継承後、「タリーズコーヒー」九州1号店のフランチャイズ運営など多角化。その後、「オール九州」をキーワードに、九州産食材による「九州パンケーキ」の製造販売や国内外での飲食店運営を展開。九州ブランドを確立し、地域活性に取り組む。

CATEGORY 03|承継後に急成長

国内の市場規模が縮小している産業でありながら、売り上げを伸ばす背景には地道な業務改善や大胆な組織改革がある。経営危機をどのように乗り越えたか、そのストーリーに注目したい。

ヤマシタ 人材育成|組織改革

代表者|山下和洋 設立年|1963年
2010年、現在のヤマシタに入社。2013年に先代社長の父親が交通事故で急逝。25歳で年商170億円、従業員約2,000人の企業を承継。 同社は病院やホテルのリネン類サプライ事業を中心に、福祉用品1,000品目以上のレンタル・販売を行うが、経営者が若返ったことで経営基盤の強化やM&Aなどを図り、就任時から収益が約4倍に。

相模屋食料 業界再編|アイディア

代表者|鳥越淳司 設立年|1951年
雪印乳業での勤務を経て、妻の実家である豆腐製造販売業に2002年に入社。当時の売上げは28億円だったが、20年で約10倍に。豆腐素材を使った「うに」や「マスカルポーネ」などの「BEYOND TOFU」、「ひとり鍋」シリーズなど多数の新商品開発でヒットを生んだ。また、豆腐・大豆加工品食品事業の継続支援を中心とした業界再編にも取り組む。

大都 第二創業|業態転換

代表者|山田岳人 設立年|1952年
工具用品の問屋業からDIY用品のECと事業者向けの通販に転換。娘婿として入社した岳人氏が問屋業を「1年で黒字化できなければ会社は解散」と宣言するが、改善されなかったため、全社員解雇と顧客ゼロという苦境を経験。商流や販路を変えてECに振り切った後、注目が集まるようになり、大手ホームセンターのプロデュースを任されるまでに。

アックスヤマザキ ブランディング|業態転換

代表者|山﨑一史 設立年|1946年
家庭用ミシンメーカー。縮小し続ける市場のもと、業績不振下で事業承継し、社長就任直後の2015年には営業損益が赤字に転落。しかし、「子ども向け」をターゲットにしたミシンや子育て世代向けの小型ミシンなどのヒット商品を開発。既存取引先への依存度の高いOEM事業からオリジナル商品の開発へと方向転換したことが奏功した。

西松屋チェーン 業務改善|組織改革

代表者|大村浩一 設立年|1956年
先代社長は店舗数を800店以上に増やして同社を巨大チェーンに成長させたが、2017年以降、利益は激減し、利益率は2パーセント未満という状態に。2020年に3代目社長に就任した浩一氏は、売上げ目標達成のための大量仕入れが在庫を増やし、売れ残りを安売りする悪循環にメスを入れて、仕入れを改革。1年で利益5倍、100億円以上の売上げ増を達成。

前田薬品工業 会社再建|地域一体型

代表者|前田大介 設立年|1966年
2013年に試験データ改ざんが発覚し、当時の代表である実父の引責辞任に伴い大介社長が3代目に就任。全取扱製品の再調査を行うことで信頼回復に努め、不採算品目を大幅に整理。外用薬に特化することで就任当時の3倍の売り上げに。薬の原点であるアロマやハーブの新事業にも着手し、富山に美容と健康をテーマにした施設をオープンした。

デジアラホールディングス 会社再建|ビジョナリー

代表者|有本哲也 設立年|2000年
祖業は材木卸やアルミサッシなど住宅建材を扱っていたが、阪神大震災以後、業績が悪化して倒産寸前に。銀行員だった息子が債務を引き継ぎ、泥臭い営業で出資金を集めて新会社を設立した。カーポートやウッドデッキなどの住宅のエクステリアをネットで販売し、施工を行う。神戸の建材事業から全国展開に。現在はCVCで次世代経営者を支援する。
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この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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