グラフィックもプロダクトも、構成要素が少なくなるほどデザインは難しくなるものだ。バランスが取りにくく、物足りなく感じることもあり、結局は他と似通った凡庸なものになってしまったりするからだ。そんな削ぎ落とすデザインを完璧なまでに成し遂げたと感じさせるのが、パルミジャーニ・フルリエの新作ウォッチ「トンダ PF マイクロローター」 ノーデイトモデルである。
虚飾を削ぎ落とす精緻なデザイン力
イタリア語で「円」を意味する名の通り、クラシックなラウンドケースを備えたパルミジャーニ・フルリエの中核モデルである「トンダ」。そこに高度な技術を要し、限られたメーカーしかつくることができないマイクロローター式のオートマチックムーブメントを搭載した「トンダ PF マイクロローター」は、2021年に発売されて話題となった。そんな同シリーズの最新作として、2024年のWWG(ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ)にて発表したのが「トンダ PF マイクロローター」 ノーデイトである。その名が示すようにノーデイト、つまり日付表示のないバージョンだが、そもそも既存の「トンダ PF マイクロローター」自体、薄型ケースに秒針を省略した2針表示に小さなアワーマーカーと目盛りのみのインデックス、控えめなブランドロゴと、虚飾を削ぎ落としたミニマルで洗練されたデザイン。ゆえに開発段階で日付表示を装備するか否かが、開発チーム内で議論になったという。
それほどこだわった端正な美しさは、6時位置にあった日付表示を取り去った今回のノーデイトバージョンでも健在だ。前作同様、ダイアルはパルミジャーニ・フルリエがシグネチャーパターンに据える、「バーリーコーン(麦の穂)」と呼ばれる伝統的パターンを熟練職人がギョーシェ彫りで精巧に刻み込んだものだが、特筆なのは「ゴールデン・シエナ」と名付けられた、これまで同メゾンが使用してこなかったアーシィーなカラーが採用されている点である。
穏やかなエレガンスを湛えた新境地
まるで夕日に照らされた麦畑のように、穏やかな気品と荘厳な美しさ、そしてナチュラルな温かみを感じさせるその色調は、精緻なギョーシェ模様と相まって独特のモアレ効果を発揮。コンマ数ミリ単位で完璧なまでに調和したピュアなデザインに、豊かでやさしげなエレガンスを添えているのだ。ムーブメントはダイアルと同じバーリーコーン模様のギョーシェを施した、半月型のプラチナ950製マイクロローターを採用する、自社製自動巻きムーブメント「PF703」を搭載。わずかな動作でもゼンマイを巻き上げるマイクロローターと、約48時間のパワーリザーブにより、使い勝手も快適だ。
無駄を削ぎ落とし、必要な要素のみを純化したデザインは、時を超越した普遍的な美しさを備え、末長く愛用したいと思わせる。パルミジャーニ・フルリエの「トンダ FP マイクロローター」 ノーデイトも、そんな生涯の愛用品となるに違いない。